【不許可事例研究④】経営管理ビザで「経営者」ではなく「作業員」と見なされた事例と対策

公開日:2026年4月3日 / 更新日:2026年4月1日

「自分は会社の代表取締役なのに、なぜビザが不許可になったのだろう?」——こうした戸惑いの声は、経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の申請・更新の現場で決して珍しくありません。登記上は経営者であっても、出入国在留管理庁が求める「経営・管理」の活動実態が認められなければ、ビザは許可されない場合があります。本記事では、不許可事例研究シリーズの第4回として、「経営者」ではなく「作業員」と判断されてしまったケースを取り上げ、その原因と具体的な対策を行政書士の実務経験に基づいて解説します。

経営管理ビザにおける「経営・管理活動」とは何か

在留資格「経営・管理」が求める活動の定義

在留資格「経営・管理」は、日本において事業の経営を行う、または事業の管理に従事する外国人に付与される在留資格です(ただし、弁護士や公認会計士など、法律上の資格が必要な事業を除きます)。具体的には、代表取締役や取締役として経営判断を行うこと、事業戦略の策定、資金計画の立案、取引先との交渉、従業員の採用・管理といった活動が該当します。ここで重要なのは、「経営」とは単に会社の代表者の肩書きを持つことではなく、実質的に経営判断を行い、事業を運営する活動を日常的に行っていることが求められるという点にあります。

「経営」と「現場作業」の境界線

出入国在留管理庁は、申請者が日々どのような業務に従事しているかを重視します。たとえば飲食店を経営している場合、仕入れ先の選定や価格交渉、メニュー開発の方向性決定、売上管理、スタッフのシフト管理などは経営活動に該当するでしょう。一方で、毎日厨房に立って調理をしている、あるいはホールでの接客業務が主な活動である場合、それは「現場作業」と見なされる可能性があります。もちろん、小規模事業では経営者が現場に立つ場面もありますが、活動の「主たる内容」が現場作業であると判断されれば、経営管理ビザの活動に該当しないとされる恐れがあります。

現行制度で求められる経営者としての要件

現行制度では、資本金3,000万円以上の要件に加え、常勤職員(フルタイムで雇用される従業員)1名以上の雇用義務が課されています。この「常勤職員の雇用」という要件は、経営者自身が現場作業から離れ、経営・管理業務に専念できる体制を整えることを制度的に担保する意味合いもあります。また、3年以上の経営管理経験の必須化により、経営者としてのスキルや実績を持つ人材であることが前提とされています。

【不許可事例】「経営者」ではなく「作業員」と判断されたケース

事例の概要:飲食店経営者のケース

本事例は、都内で小規模な飲食店を経営する外国人の方のケースです。この方は代表取締役として会社を設立し、経営管理ビザを取得していました。しかし、ビザの更新申請(在留期間更新許可申請)を行った際、出入国在留管理庁から「在留資格『経営・管理』に該当する活動を行っているとは認められない」として不許可の決定が下されました。一体何が問題だったのでしょうか。

不許可の理由:活動実態の詳細

審査の過程で明らかになったのは、この経営者が1日のほとんどの時間を厨房での調理業務に費やしていたという事実です。従業員を雇用していたものの、人手不足を理由に経営者自らが調理の中心を担っていました。さらに、事業計画の見直しや収支分析、新規顧客の開拓といった経営活動の記録がほとんど残されていなかったのです。

出入国在留管理庁は、提出された書類や聞き取り調査の結果から、この方の主たる活動は「調理」であり、「経営」ではないと判断しました。形式的には代表取締役であっても、活動の実態が伴わなければ、経営管理ビザの活動とは認められないという典型的な事例といえるでしょう。

出入国在留管理庁が「作業員」と判断する具体的なポイント

日常の業務内容と時間配分

出入国在留管理庁が最も注目するのは、申請者の日常業務の内容とその時間配分です。1日8時間のうち、6時間以上を現場作業(調理、接客、配達、製造作業など)に費やしている場合、経営活動を行う時間が物理的に不足していると判断される可能性が高くなります。経営者としての活動には、事業戦略の検討、財務管理、取引先との打ち合わせ、従業員の管理・教育、法令遵守の確認など、多岐にわたる業務が含まれるためです。

経営判断の記録と証拠の有無

経営者として活動していることを示す客観的な証拠があるかどうかも重要なポイントです。取締役会議事録(取締役会での決定事項を記録した文書)、経営会議の記録、事業計画書の改訂履歴、収支分析レポート、取引先との契約書・交渉記録、採用面接の記録などが該当します。これらの書類が整備されていなければ、実質的な経営活動を行っていないと推認される可能性があります。実務上の経験から申し上げると、「記録に残っていない経営活動は、出入国在留管理庁にとっては存在しないのと同じ」と考えるべきでしょう。

従業員体制と業務分担

現行制度では常勤職員1名以上の雇用が義務付けられていますが、形式的に雇用しているだけでは不十分です。現場作業を担当する従業員がいて、経営者は経営に専念するという明確な業務分担が確立されている必要があります。従業員がいるにもかかわらず経営者自身が現場作業の中心を担っている場合、「なぜ経営者が作業をしているのか」という疑義が生じることになります。

「作業員」と判断されないための具体的な対策

経営活動の「見える化」と記録の徹底

最も効果的な対策は、日々の経営活動を記録として残すことです。具体的には、週次・月次での経営会議を開催し議事録を作成する、事業計画書を四半期ごとに見直し改訂する、月次の収支報告書・損益計算書を作成する、取引先との打ち合わせ記録をメモとして残す、といった取り組みが挙げられます。これらの記録があれば、ビザの更新申請時に「経営活動を行っていた」という客観的な証拠を提示できるのです。行政書士としてお伝えしたいのは、「記録を残すこと自体が経営活動の一部である」という意識を持っていただくことです。

業務時間の適切な配分

経営者としての活動と現場作業の時間配分を明確に管理することが大切です。目安として、勤務時間の少なくとも半分以上は経営・管理業務に充てることが望ましいとされています。やむを得ず現場に立つ場合でも、その理由(繁忙期の一時的な対応、新メニューの開発・品質チェックなど)を記録しておくことをお勧めします。「経営者が現場を理解するために一時的に作業を行うこと」と「経営者の主たる活動が現場作業であること」は、出入国在留管理庁の目には全く異なるものとして映ります。

適切な人材配置と組織体制の構築

現場作業を任せられる従業員を適切に配置し、組織としての業務分担を明確にしましょう。組織図を作成し、各ポジションの役割と責任範囲を文書化しておくことも有効です。特に飲食業や小売業など、経営者が現場に関わりやすい業種では、意識的に「経営の時間」と「現場の時間」を分離する仕組みを作ることが重要といえます。

行政書士の実務経験から見る「活動内容の疑義」の落とし穴

「小規模事業だから仕方ない」は通用しない

実務でよくお見かけするのが、「うちは小さな会社だから社長が現場に出るのは当然だ」という認識です。お気持ちは十分に理解できますが、出入国在留管理庁の審査においてはこの考え方は通用しません。現行制度では資本金3,000万円以上、常勤職員1名以上という要件が設けられており、これは「経営に専念できる規模の事業」を前提としています。事業規模が小さいことは、むしろ経営活動の実態を丁寧に立証する必要があることを意味するのです。

更新申請時に初めて問題が発覚するパターン

新規申請時には事業計画の段階であるため、活動実態の問題は表面化しにくい傾向にあります。しかし、1年後の更新申請時に「実際に何をしていたのか」が問われた際、経営活動の証拠を十分に提示できないというケースは少なくありません。ビザを取得した時点から、更新を見据えた経営活動の記録づくりを始めることが非常に大切です。行政書士に早い段階でご相談いただければ、更新に向けた準備のアドバイスを差し上げることが可能です。

不許可を回避するためのチェックリスト

以下のポイントを定期的に確認することで、「作業員」と判断されるリスクを大幅に低減できます。

  • 勤務時間の半分以上を経営・管理業務に充てているか
  • 経営会議や取締役会の議事録を定期的に作成しているか
  • 事業計画書を定期的に見直し、最新の状態に更新しているか
  • 月次の収支管理・財務分析を行っているか
  • 従業員との業務分担が明確になっており、組織図や職務分掌が文書化されているか
  • 取引先との交渉・契約の記録を保管しているか

これらの項目にすべて「はい」と答えられる状態を維持することが、ビザの更新を安全に進めるための基盤となるでしょう。

まとめ

今回の不許可事例研究では、登記上は代表取締役であっても、日常の活動実態が「現場作業」中心であった場合に経営管理ビザが不許可となるケースを解説しました。出入国在留管理庁は形式ではなく実質を重視します。経営管理ビザを維持するためには、経営者としての活動を日々記録し、適切な組織体制を構築し、経営に専念する時間を確保することが不可欠です。

「自分はきちんと経営をしている」と思っていても、それを客観的に証明できなければ審査では認められません。ぜひ、本記事のチェックリストを活用し、日頃から経営活動の「見える化」に取り組んでいただければと思います。

行政書士事務所シクロでは、経営管理ビザの申請・更新に関するご相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。

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