在留カードとマイナンバーカード、一体化すべき?メリット・デメリットを解説

公開日:2026年5月10日

日本に在留する外国人にとって、複数の身分証明書やカードを管理することは日常の大きな負担になることがあります。特に「在留カード」と「マイナンバーカード」の2つは、いずれも身分確認や行政手続きに関係する重要なカードです。近年、これらのカードを一体化すべきではないかという議論が進み、デジタル化推進の観点からも注目が集まっています。

本記事では、在留カードとマイナンバーカードの役割の違いを整理した上で、一体化することのメリットとデメリット、そして現在の法的状況について解説します。外国人採用に携わる企業のご担当者様や、在日外国人の皆様にとって、今後の制度変更を理解するための指針となれば幸いです。

在留カードとマイナンバーカードの基本的な役割

在留カード(Residence Card)とは

在留カードは、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)に基づき、日本に中長期間在留する外国人に対して交付される身分証明書です。在留資格の内容(就労可否など)、在留期間、氏名、生年月日、性別、国籍・地域などが記載されています。

在留カードは以下のような場面で重要となります。

  • 入出国や在留手続における身分確認
  • 銀行口座開設時の本人確認
  • 雇用契約時の身分確認
  • 運転免許証の取得
  • 各種行政手続きにおける身分確認
  • 出入国在留管理庁への各種届出
  • アパートやオフィスの賃貸契約時

特に、在留カードに記載される「在留資格」の情報は極めて重要です。「技術・人文知識・国際業務」や「経営・管理」などの在留資格の種類によって、就労できる活動内容が異なります。このため、採用企業側でも従業員の在留資格を正確に把握する必要があり、在留カードは採用・雇用管理の重要書類となっています。

マイナンバーカード(My Number Card)とは

マイナンバーカードは、日本の社会保障・税番号制度に基づき、個人に付与される12桁の番号(マイナンバー)を確認するためにも用いられる身分証明書です。2016年の導入以来、デジタル化の進展に伴い、その利用範囲は拡大しています。

マイナンバーカードには以下のような情報が記載されています。

  • 12桁のマイナンバー
  • 氏名、生年月日、性別、住所
  • 顔写真
  • 電子証明書に関する機能

このカードは、所得税申告時の本人確認、社会保険手続き、銀行口座開設時の本人確認、各種行政サービスのオンライン申請(マイナポータルの利用)など、幅広い場面で活用されています。マイナンバーは税務行政や社会保障などに関する個人情報を管理するための重要な識別番号です。

現在の法的根拠

在留カード制度は、入管法上の在留管理制度に基づいて運用されています。一方、マイナンバーカードは、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律など、マイナンバー制度に関する法令に基づいて運用されています。

この2つのカードは、もともと異なる目的と法体系に基づく制度として運用されてきました。ただし、令和6年法律第59号による改正により、在留カード等とマイナンバーカードを一体化する「特定在留カード等」の制度が整備され、2026年(令和8年)6月14日の運用開始が予定されています。なお、制度の詳細は今後変更される可能性もあるため、最新情報は出入国在留管理庁などの公的情報で確認することが重要です。

カード一体化のメリット

1. 外国人の利便性向上

現在、在留外国人の中には、在留カードとマイナンバーカードの2枚を管理している方が多くいます。両カードの機能が一体化されることで、手続ごとに複数のカードを使い分ける負担が軽減され、紛失リスクの低下や管理の簡素化につながることが期待されます。

多くの外国人は、複数の身分証の管理の複雑さに困惑することがあります。カードの一体化は、こうした実務的な負担を軽減する効果が期待されます。ただし、特定在留カード等の取得は、制度上、対象者が申請することで交付を受ける仕組みとされています。

2. 行政手続きの簡素化

カード機能が一体化されることで、銀行口座開設や各種行政サービス申請の際に、複数のカードを提示する場面が減る可能性があります。本人確認プロセスが一元化され、手続きに要する時間が短縮されることも期待されます。

特に、金融機関や官公庁との手続きでは、本人確認書類として複数のカードや情報確認が必要となることがあります。一体化が進むことで、手続き全体がシンプルになる可能性があります。

3. デジタル化・DX推進への貢献

マイナンバーカードはICチップを搭載し、デジタル社会への基盤として機能しています。在留カードに関する機能とマイナンバーカードの機能が一体化されることで、オンライン申請やデジタル行政サービスの拡充が進みやすくなる可能性があります。

マイナポータルなどのデジタルプラットフォームと在留関係情報の連携が進めば、外国人もより利用しやすい形で行政サービスを受けられるようになることが期待されます。

4. 法人側の事務負担軽減

外国人を採用している企業にとって、社員の身分確認に必要な書類や確認手順が整理されることにより、人事・労務管理の事務コストが削減される可能性があります。採用時や在留資格変更時に必要な書類確認の手続きが分かりやすくなれば、企業のコンプライアンス体制もより効率的に構築できるでしょう。

ただし、企業側では、従来の在留カード、新様式の在留カード、特定在留カード等が一定期間併存する可能性を踏まえ、確認方法を整理しておくことが重要です。

5. セキュリティ向上の可能性

複数カードの機能が一体化されることにより、偽造・不正使用のリスク軽減、管理体制の一元化によるセキュリティ強化が期待されます。ICチップの仕様や券面情報の見直しにより、情報の保護や改ざん防止の観点でも制度改善が進む可能性があります。

もっとも、カードの機能が高度化すればするほど、利用者・事業者・行政機関のそれぞれにおいて、適切な本人確認と情報管理が求められます。

カード一体化のデメリット・課題

1. 在留資格の特性との関係

在留カードに記載される在留資格は、入管法に基づいた制度です。一方、マイナンバーは税務・社会保障などの行政手続に用いられる制度です。これら異なる法体系を連携させることは、制度面での複雑さを伴います。

たとえば、在留資格が「技術・人文知識・国際業務」から「永住者」に変更される場合、それに応じてカードの情報も更新される必要があります。この更新プロセスをマイナンバー制度側の情報とどのように連動させるかは、技術的・法的に慎重な設計が必要な問題です。

2. 国籍と個人番号の関係性

マイナンバーは、日本に住民票がある外国人にも付番されます。しかし、在留資格を失って出国する場合や、再び日本に入国して住民登録を行う場合には、個人番号やカード機能の取扱いについて整理が必要です。

在留カードは在留資格や在留期間と密接に関係しますが、マイナンバー制度は住民登録や行政手続と関係します。このため、出国時、再入国時、在留期間更新時などに、どの情報をどのタイミングで更新するのかという実務上の課題が残ります。

3. カードの有効期間の相違

在留カードの有効期間は、在留資格や在留期間、年齢などによって異なります。また、マイナンバーカードの有効期間も、年齢や電子証明書の有効期間などにより異なります。

異なる有効期間を持つカード機能を統合した場合、どのタイミングで更新するのか、在留期間更新や在留資格変更とカード更新をどのように連動させるのかが課題となります。更新手続が分かりにくいままでは、かえって利用者の負担が増える可能性もあります。

4. プライバシーと情報管理

一体化により、在留資格情報とマイナンバー制度に関係する情報が、同じカード機能の中で扱われることになります。これにより、情報漏えい時のリスクが高まる可能性があり、情報セキュリティ体制の強化が不可欠です。

個人の在留資格、住所、就労状況、社会保障や税務に関係する情報は、いずれも慎重に扱うべき情報です。制度上のアクセス制限、本人確認手順、事業者側の取扱いルールを明確にすることが重要です。

5. 技術的・行政的な実装コスト

両カード制度を連携・一体化するには、ICチップの仕様、カード交付窓口の運用、地方出入国在留管理局と市区町村のシステム連携など、多くの実装対応が必要になります。

全国の窓口で同じようにスムーズな対応を行うには、職員向けの運用整備、利用者向けの多言語案内、企業向けの本人確認実務の周知なども必要です。制度が開始された後も、実務上の混乱を避けるための継続的な情報提供が求められます。

6. 国際的な整合性

多くの国では、国籍保有者用と外国人用の身分証明書を分けて運用しています。日本が在留カードとマイナンバーカードの機能一体化を進める場合、国境管理、本人確認、国際的な身分証明の実務との整合性をどのように確保するかが課題となります。

特に、出入国手続や在外公館での手続、外国の金融機関・公的機関での本人確認など、日本国外での認識にも影響する可能性があるため、制度説明の分かりやすさが重要です。

 現在の法改正動向と政策の方向性

日本政府は、デジタル社会の実現に向けてマイナンバーカードの利用拡大を推進しています。その流れの中で、在留カード等とマイナンバーカードの一体化についても制度整備が進められてきました。

出入国在留管理庁は、法改正により在留カード等とマイナンバーカードを一体化することを可能とし、住民基本台帳に記録されている中長期在留者または特別永住者が、特定在留カードまたは特定特別永住者証明書の交付を申請できる制度を案内しています。運用開始は2026年(令和8年)6月14日が予定されています。

したがって、在留カードとマイナンバーカードの一体化は、単なる将来構想ではなく、すでに制度として準備が進められている段階にあります。ただし、出入国在留管理庁の案内でも、掲載時点で予定している内容であり、今後変更される場合があるとされています。企業や外国人本人は、実際の申請開始時期、必要書類、対象手続、自治体窓口の対応などを、必ず最新の公的情報で確認することが重要です。

外国人本人・採用企業が今からできること

一体化制度の運用開始に備え、以下の対応が推奨されます。

外国人本人

  • 在留カードを安全に管理し、紛失しないよう注意する
  • マイナンバーカードを取得している場合は、有効期限や電子証明書の期限を確認しておく
  • マイナンバーカードを未取得の場合は、取得の要否を検討する
  • 在留カード更新のスケジュールを把握しておく
  • マイナポータルの利用を検討し、デジタルサービスに慣れておく
  • 特定在留カード等の取得を希望する場合は、対象手続や申請時期を公的情報で確認する

企業のご担当者様

  • 外国人従業員の在留資格と在留期間の管理体制を整備する
  • 本人確認書類として、従来の在留カード、新様式の在留カード、特定在留カード等に対応できる体制を検討する
  • 将来的な制度変更に備え、人事・労務システムの更新可能性を検討する
  • 外国人採用時の手続き標準化を図り、制度変更への対応力を高める
  • 特定在留カード等の取得は、対象者の申請に基づく制度であることを前提に、従業員への案内を行う

まとめと相談のご案内

在留カードとマイナンバーカードの一体化は、外国人の利便性向上やデジタル社会推進の観点から大きなメリットを持つ一方で、法制・技術・セキュリティの各面で多くの課題が存在します。

現在は、特定在留カード等の制度として、2026年(令和8年)6月14日の運用開始が予定されています。企業や外国人個人は、現行制度をしっかり理解した上で、今後の制度変更に対応できる体制を整えることが重要です。

外国人採用や在留資格管理に関するご不明な点、あるいは今後の制度変更への対応についてのご相談は、行政書士事務所シクロまでお気軽にお問い合わせください。

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