経営管理ビザの活動範囲:「経営」と「現場作業」の境界線はどこにあるのか?

公開日:2026年5月22日

はじめに

経営管理ビザを取得して日本で会社を立ち上げた外国人経営者から、当事務所には次のような相談が数多く寄せられます。

「忙しいので、自分も現場に出て手伝ってもよいのか」
「人手が足りないとき、自社の店舗で接客や調理をしても問題ないのか」
「自分が作業をすれば、人件費を圧縮できるのではないか」

――こうした疑問は、ビジネスを軌道に乗せようと真剣に考えている経営者ほど抱きやすいものです。

しかし、一般的には、経営管理ビザで認められている活動は、あくまで「事業の経営」または「管理」であり、現場作業や単純労働は原則としてその範囲には含まれないとされています。境界線の引き方を誤ると、在留資格の更新や永住申請の場面で不利益につながる可能性があります。

本稿では、経営管理ビザの活動範囲について、「経営」と「現場作業」の境界線がどこにあるのかを、行政書士の実務目線で解説します。

経営管理ビザで認められている活動とは

経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)は、出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表に定められた在留資格の一つとされています。

同法では、「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動」と規定されていると一般に理解されています。

ここで重要なのは、「経営」と「管理」という二つの活動類型に限定されている点です。具体的には、会社の代表取締役や取締役として経営方針を決定する、事業計画を立案・実行する、資金繰りや投資判断を行う、人材の採用・配置・評価を行う、取引先との契約交渉を行うといった、いわゆる「経営層・管理職」の業務が中心となります。

言い換えれば、現場の従業員と並んで日常的にライン業務をこなしたり、調理場で料理を作ったり、店頭でレジ打ちをしたり、配送車を運転して荷物を届けたりするような業務は、原則として経営管理ビザの活動範囲には含まれないとされています。

「経営」と「現場作業」の境界線をどう考えるか

とはいえ、現実のビジネスでは、経営者が一切現場に立ち入らないということはほとんどありません。特にスタートアップや小規模法人では、経営者自身がプレイングマネージャーとして動かざるを得ない場面も多くあります。

では、どこまでが「経営・管理活動の一部」として許容され、どこからが「現場作業」として問題になるのでしょうか。

実務上の判断基準として重要なのは、その行為が「経営・管理判断のために不可欠な行為かどうか」という点です。

例えば、店舗のオペレーションを把握するために試験的に厨房に入る、新サービスの品質を確認するために自ら接客対応をする、現場の課題を発見するために一時的にラインに入るといった行為は、経営判断の材料を得る目的があるため、「経営活動の一部」と評価される余地があります。

一方で、人手が足りないという理由で恒常的に現場のシフトに入る、本来雇うべき従業員の代わりに自分が日々の作業を担う、単純労働を主たる業務時間として行うといった働き方は、「経営」というより「労務提供」と評価され、在留資格該当性に疑義が生じる可能性が高くなります。

なぜ現場作業中心の働き方が問題視されるのか

そもそも経営管理ビザは、日本において事業を経営し、雇用を生み出し、経済に貢献する外国人を受け入れる趣旨の制度と一般に理解されています。

もし経営者自身が単純労働を担い、本来雇用すべき人材を雇わないまま事業を回している場合、それは制度趣旨に照らして「経営活動の実態が乏しい」と評価されるおそれがあります。

さらに、現場作業中心の働き方は、本来「技能」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」などの就労系在留資格で行うべき活動と重複する可能性があり、制度全体の整合性の観点からも注意が必要です。

また、近年の運用では、事業の安定性・継続性などがより重視される傾向にあります。更新時に「経営者でありながら、実態は現場労働者」と評価されると、不許可や在留期間短縮のリスクが生じる可能性があります。

実務上気を付けたいポイント

境界線を踏み越えないために、経営者として意識しておきたい実務上のポイントを整理します。

  • 業務時間の使い方を意識的に管理すること
  • 組織体制を整備すること
  • 議事録・契約書・経営判断の記録を残すこと
  • 迷ったら早めに専門家に相談すること

ケース別:こんなとき、どう判断すべきか

ケース1:飲食店の代表者がランチタイムだけ厨房に入って調理を手伝っている。この場合、ランチタイムだけの限定的な手伝いであり、店舗運営全体の管理業務(仕入れ、シフト管理、売上管理、人事)を主体的に行っているのであれば、直ちに問題視されない可能性があります。ただし、調理が業務時間の大半を占めるようであれば再検討が必要です。

ケース2:輸入販売会社の代表者が自ら配送業務を担っている。配送業務が経営者本人の主要業務になっている場合、「経営」というより「現場業務」と評価されやすく、リスクが高い類型です。配送スタッフの雇用や外部委託への切り替えを検討すべきでしょう。

ケース3:ITスタートアップの代表者が自らプログラミングを行っている。これは判断が分かれるところですが、自社プロダクトの設計・開発方針を決める「技術経営」としての側面が強い場合は経営活動の一部と評価される余地があります。一方で、外注先と同じレベルでコーディング作業を恒常的に行っているだけであれば、「技術・人文知識・国際業務」の活動領域と重なり、慎重な検討が必要です。

まとめ

経営管理ビザは、日本で事業を経営するという自由度の高い在留資格である一方、「経営」と「管理」に活動範囲が限定されているという制約もあります。

現場に関わること自体は否定されませんが、「経営者としての本業を全うしているか」という視点を常に持つことが重要です。

「自分の働き方は経営管理ビザの活動範囲に収まっているのか」「現場での関わり方をどう整理すればよいのか」「次回更新に向けて体制をどう整えるべきか」――こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、行政書士事務所シクロまでご相談ください。

関連リンク

行政書士事務所シクロの関連記事

公的機関の参考ページ

お問い合わせ

当事務所では、初めてのご相談に限り、対面・電話・オンラインを問わず1時間まで無料で対応しております。まずは安心してお気軽にご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

「ホームページを見た」とお伝えください。

受付時間:平日10:00-19:00(土日祝休み)
メールでのお問い合わせ

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

    ページトップへ戻る