経営管理ビザの更新時期が近づくと、「2期連続で赤字決算になってしまった。もう更新は無理ではないか」と不安を抱える経営者の方からのご相談を多くいただきます。
確かに赤字決算は審査上、不利に働き得る要素です。しかし、2期連続赤字であっても、更新が認められる事例は実務上、決して少なくありません。重要なのは、赤字という事実そのものだけではなく、その赤字をどのように合理的に説明し、今後の事業継続性を客観的に示せるかという点です。
本記事では、赤字決算を抱える経営者の方が更新審査に向けて準備すべき具体的な対策について解説します。
出入国在留管理庁が更新審査で本当に見ているもの
経営管理ビザの更新審査において、出入国在留管理庁が重視するのは「事業の継続性」と「安定性」です。これは、出入国管理及び難民認定法に基づく在留期間更新の枠組みの中で、現に有する在留資格の活動を引き続き行うことができるかを判断する場面で問題となります。
誤解されがちですが、入管は単年度の黒字・赤字という結果だけで、機械的に判断しているわけではありません。
審査で確認されるのは、赤字が一時的なものか構造的なものか、債務超過に陥っていないか、運転資金は確保されているか、そして今後の事業計画が現実的かどうかといった総合的な要素です。
創業期や事業転換期に一時的な赤字が出ることは、経営の世界では珍しくありません。合理的な説明と将来見通しを、客観的な資料とともに示すことができれば、更新が認められる余地はあります。
「絶望的」と言われる赤字の3つのパターン
一方で、更新が極めて困難になる赤字には共通したパターンがあります。
第一に、債務超過に陥っているケースです。貸借対照表で純資産がマイナスとなり、かつ改善の見通しが立たない場合、事業継続性そのものが疑われます。
第二に、売上が前年比で大幅に減少し続けているケースです。市場縮小や顧客離れによる構造的な売上減は、赤字の原因が一過性ではないことを示してしまいます。
第三に、税金や社会保険料の滞納が発生しているケースです。これは経営の健全性を直接的に損なう要素であり、更新審査では厳しく評価され得ます。
これらに該当する場合は、申請直前に慌てて対応するのではなく、早急に専門家へ相談すべき段階と言えるでしょう。
事業の継続性を示すための具体的な対策
それでは、2期連続赤字を抱えながら更新審査に臨む場合、どのような準備が必要でしょうか。
まず最重要となるのが、赤字の原因を客観的かつ論理的に説明する書面の作成です。たとえば、インバウンド需要の変動、原材料費や輸入コストの高騰、設備投資の前倒し計上、新規拠点開設に伴う一時費用など、外部要因や戦略的判断に基づく赤字であれば、それを数値で裏付ける資料とともに提出することが効果的です。
次に重要なのは、直近の業績回復傾向を示すことです。決算書は年単位の資料ですが、月次試算表や直近四半期の売上推移表を添えることで、底打ちから回復への流れを可視化できます。新規契約書、受注残一覧、見込み顧客リストなど、将来収益の根拠となる資料も有効に機能します。
さらに、自己資金の状況や代表者個人の与信状況も重要な判断材料となります。会社が赤字でも、代表者個人からの貸付や役員報酬の減額により事業継続資金が確保されていることを示せれば、継続性への懸念は軽減されやすくなります。
具体的には、預金残高証明書、代表者借入金の契約書、株主資本変動計算書などを資料として添付することで、資金繰りに余力があることを数値ベースで説明できます。また、金融機関からの融資枠が残っている場合や、取引先との支払サイト交渉により短期的なキャッシュフローが安定している場合も、その事実を補足資料として明示することが有効です。
事業計画書の見直しが鍵を握る
令和7年(2025年)10月16日施行の改正以降、在留資格「経営・管理」においては、事業計画書の重要性が一段と高まっています。
改正後の提出書類では、在留期間更新許可申請についても、経営・管理に関する専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書の写しが掲げられています。そのため、赤字決算を伴う更新では、単に「赤字ではあるが事業を続けたい」と説明するだけでは足りず、専門家評価を受けた事業計画書の中で、事業の具体性、合理性、実現可能性を客観的に示すことが重要になります。
赤字決算を伴う更新では、なぜ赤字となったのか、どのような施策で黒字化を目指すのか、その施策の実現可能性はどの程度か、という3点を明確に記述することが重要です。
コスト構造の見直し、新規事業の立ち上げ、人員配置の最適化など、具体的な行動計画とKPIを示すことで、審査上も「この事業は継続する蓋然性がある」と判断されやすくなります。
なお、令和7年10月16日の施行日時点で既に「経営・管理」で在留中の方については、令和10年(2028年)10月16日までの更新申請に関して、経過的な取扱いが設けられています。ただし、これは「従来どおりの資料だけで当然に更新できる」という意味ではありません。経過措置期間中であっても、経営状況、改正後基準への適合状況、今後適合する見込みなどを踏まえて許否が判断されます。
そのため、既存在留者の更新であっても、赤字決算を抱えている場合には、改正後基準を意識した事業計画の見直しと、専門家評価を含む補足資料の準備が重要です。特に、資金繰り、売上回復見込み、債務超過の有無、納税・社会保険料の履行状況、今後の人員体制などを整理し、事業継続性を多角的に説明できる状態にしておく必要があります。
提出書類の質を高める実務的なポイント
更新申請では、決算書類のほかに、法人事業概況説明書、納税証明書、登記事項証明書などが求められます。これらに加えて、上述した補足資料を「申請理由書」または「事業継続性に関する説明書」として整理し、添付することが実務上の重要なポイントです。
特に注意すべきは、書類間の数値整合性です。決算書、月次試算表、事業計画書、納税証明書の数値に矛盾があると、それだけで信頼性が損なわれます。提出前に税理士や行政書士と連携し、書類全体の整合性を確認することをお勧めします。
また、代表者が日本での事業に真摯に取り組んでいることを示すため、出張歴や日本滞在実績、取引先との打合せ記録なども補足資料として有効な場合があります。書類の質と量、そして全体の説得力が、赤字決算を抱える更新案件においては結果を左右する重要な要素となります。
実務上は、決算書の損益計算書だけでなく、販売費及び一般管理費の内訳明細を併せて提示することも効果的です。たとえば、広告宣伝費や開発費といった先行投資的な支出が一時的に膨らんでいる場合、それが将来収益につながる戦略的支出であることを補足説明することで、赤字の合理性を説明しやすくなります。
決算書の数字を単独の結果として見せるのではなく、経営戦略のストーリーの一部として位置づける視点が、審査官への説得力を高めるのです。
申請タイミングと代理人選定の重要性
赤字決算を伴う更新申請では、申請のタイミングそのものも結果に影響します。在留期間更新許可申請は、在留期間の満了日以前に行う必要があります。6か月以上の在留期間を有する方については、原則として在留期間満了のおおむね3か月前から申請できます。
在留期限の直前に駆け込みで申請するよりも、期限の3か月前を目安に余裕を持って準備を進めることで、追加資料の請求にも落ち着いて対応できます。万が一、補正指示が入った場合でも、十分な対応時間を確保できることは大きな安心材料となります。
また、申請を依頼する代理人の選定も重要です。経営管理ビザの実務経験が豊富な行政書士に依頼することで、書類構成や説明の組み立て方に大きな差が生まれます。複雑な案件ほど、経験値の差が結果に直結しやすい傾向があります。
まとめ:早めの準備が更新成功の分かれ道
2期連続赤字であっても、経営管理ビザの更新は決して絶望的とは限りません。重要なのは、赤字の原因を明確に説明し、事業の継続性と将来性を客観的な資料で裏付けることです。
特に、令和7年10月16日施行の改正後は、在留期間更新許可申請においても、経営・管理に関する専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書の写しが提出書類として掲げられています。赤字決算を抱えている場合には、この事業計画書の内容が、事業継続性を説明するうえで非常に重要な資料となります。
また、施行日時点で既に「経営・管理」で在留している方については、令和10年10月16日までの経過的な取扱いがありますが、これも更新が当然に認められるという意味ではありません。経営状況や改正後基準への適合見込みなどを踏まえて判断されるため、早めに資料を整え、専門家と連携して準備を進めることが重要です。
逆に言えば、準備不足のまま申請に臨めば、たとえ黒字決算であっても不許可となるリスクはあります。
更新時期の半年前から準備を始めることが理想ですが、申請直前であっても可能な限りの対応をご提案いたします。お困りの方は、ぜひ行政書士事務所シクロまでご相談ください。
関連リンク
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公的機関の参考ページ
- 出入国在留管理庁:在留資格「経営・管理」
- 出入国在留管理庁:在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について
- 出入国在留管理庁:在留期間更新許可申請
- e-Gov 法令検索:出入国管理及び難民認定法


