経営者として家族を日本に呼び寄せる:「家族滞在」ビザの基本

公開日:2026年6月18日

経営・管理ビザを取得し、いよいよ日本で本格的に事業を展開しようとするとき、多くの経営者が直面するのが「家族をどう呼び寄せるか」という問題です。配偶者や子どもと離れて単身で活動を続けるのは、精神的にも実務的にも大きな負担となります。日本で事業に専念し、長期的に腰を据えて経営を行うためには、家族と共に暮らせる環境を整えることが欠かせません。

そのための在留資格が「家族滞在」です。本記事では、経営・管理ビザを保有する外国人経営者が家族を日本に呼び寄せる際に必要となる「家族滞在」ビザの基本について、対象範囲、要件、申請手続き、そして実務上の注意点を解説します。

「家族滞在」ビザとは

「家族滞在」は、出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一の四に定められた在留資格の一つです。一定の在留資格をもって日本に在留する外国人の扶養を受ける配偶者または子が、日本で日常的な活動を行うことを目的に取得します。

経営・管理ビザを保有する外国人経営者は、この「家族滞在」の対象となる扶養者になり得ます。つまり、経営者本人が経営・管理ビザを取得していれば、その配偶者および子は、要件を満たす限り「家族滞在」ビザを申請できるということです。法的根拠は入管法にあり、具体的な手続や提出書類は出入国在留管理庁の案内によって示されています。なお、「家族滞在」は、身分系の在留資格である「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」とは制度的に区別されますので、混同しないよう注意が必要です。

対象となる家族の範囲

「家族滞在」で呼び寄せられるのは、扶養者の「配偶者」と「子」に限定されます。両親や兄弟姉妹、いとこなどの親族は、原則として「家族滞在」の対象外です。この点は誤解が多いところで、相談の現場でも「親を呼びたい」というご希望をいただくことが少なくありません。なお、高度専門職等に関する例外的な取扱いとして、一定の場合に「特定活動」が検討されることはありますが、「家族滞在」とは別制度です。

配偶者について

配偶者は、法律上有効な婚姻関係にある相手を指します。事実婚や内縁関係は、原則として含まれません。本国の婚姻証明書など、婚姻関係を客観的に証明する書類が必要です。婚姻関係が成立していても、別居が長期間に及び、実態として夫婦関係が破綻していると判断される場合には、許可が下りないこともあります。

子について

子は、実子・養子のいずれも対象となります。ただし、養子の場合は本国法上適法に成立した養子縁組であることが必要です。年齢に上限は明示されていませんが、扶養関係が継続している必要があるため、成人して経済的に独立している子は対象外と判断される傾向があります。未成年であっても、本国で婚姻している、または独立した生計を営んでいる場合は対象とならないことがあります。

許可を得るための主な要件

「家族滞在」ビザを取得するためには、形式的に「配偶者」「子」であることに加え、以下の点を満たすことが重要です。

扶養者の在留資格が安定していること

経営・管理ビザの場合、新規取得直後は事業の継続性や安定性が十分に立証されていないケースもあります。家族滞在の審査では、扶養者である経営者の事業が継続的に運営され、収入面でも家族を扶養できる見込みがあるかが重視されます。事業計画書、決算書、納税証明書などを通じて、事業の実態と収益性を示すことが鍵となります。

扶養能力が十分にあること

扶養者が家族を経済的に支えられることを、客観的な資料で示す必要があります。法人代表者の場合、役員報酬の額、源泉徴収票、住民税課税証明書、預貯金残高証明書などが立証資料となります。設立から間もない法人で報酬額が低い場合には、預貯金や事業の将来見通しを補強資料として提出する工夫が求められます。

同居して扶養する意思と実態があること

申請時には、住居の確保状況も確認されます。賃貸借契約書や住宅取得の証明など、家族で居住するに足る住居が確保されていることを示します。単に扶養者が「呼び寄せたい」というだけでは不十分で、生活基盤の実態が問われる点に注意が必要です。

申請手続きの流れ

海外に居住する家族を日本に呼び寄せる場合、原則として「在留資格認定証明書交付申請」(COE申請)から始めます。手続きの大まかな流れは次のとおりです。

まず、扶養者である経営者が、居住予定地または受入機関の所在地を管轄する地方出入国在留管理官署に対して、家族の在留資格認定証明書交付申請を行います。審査期間はおおむね1〜3か月程度ですが、申請内容や時期によって前後します。

COEが交付されたら、紙の在留資格認定証明書の場合は原本を本国の家族に送付し、電子メールで受領した場合は電子データを家族と共有します。その後、家族は本国の日本大使館・領事館で査証(ビザ)の発給申請を行います。査証取得後、日本に入国した時点で「家族滞在」の在留資格が付与されます。

COE交付後の段取りについては、在留資格認定証明書(COE)が交付された!来日までの手続き完全ガイドも参考になります。

すでに日本に「短期滞在」などで滞在している家族について、在留資格を「家族滞在」に変更するケースもあります。この場合は「在留資格変更許可申請」となり、必要書類や審査の観点はCOE申請と類似しています。ただし、「短期滞在」からの変更は、やむを得ない特別の事情が必要とされ、原則として容易ではありません。単に日本滞在中にCOEが交付されたというだけでは足りない点にも注意が必要です。

「家族滞在」で行える活動と制限

「家族滞在」の在留資格で認められるのは、原則として日本での日常生活全般です。学校への通学や日常の社会生活については問題ありませんが、就労については明確な制限があります。

本人が就労を希望する場合、「資格外活動許可」を別途取得しなければなりません。許可を得た場合でも、就労時間は原則として週28時間以内に制限され、許可された範囲内で活動する必要があります。風俗営業等、許可の対象外となる業務もあります。配偶者がフルタイムで就労したい場合、「家族滞在」のままでは対応できないため、本人の在留資格を「技術・人文知識・国際業務」など就労可能な資格へ変更することを検討する必要があります。

経営者ならではの注意点

外国人経営者が家族滞在ビザを申請する際に、特に注意すべきポイントを実務上の観点から整理します。

第一に、事業の実態を丁寧に示すことです。設立直後の法人や売上が安定していない時期に家族滞在を申請する場合、扶養能力の立証がハードルとなります。事業計画書だけでなく、契約書、請求書、入金記録など、事業活動の実態を示す資料を補完的に整えることが重要です。新規取得段階からの準備については、これから「経営管理ビザ」を新規取得するあなたへもあわせてご覧ください。

第二に、報酬額の設定です。役員報酬を極端に低く設定していると、扶養能力に疑義を持たれる恐れがあります。法人の資金繰りとのバランスを取りつつ、家族を扶養するために合理的な水準の報酬を設定することが望まれます。

第三に、住居の確保です。経営者本人の住居が手狭な単身用物件の場合、家族で居住するには不適切と判断されることがあります。家族の来日に先立ち、家族向けの居住環境を準備しておくことが望ましいでしょう。

第四に、本国側書類の準備です。婚姻証明書、出生証明書、戸籍に類する書類などは、本国によって取得方法や書式が異なります。アポスティーユや翻訳の要否も含めて、早めに準備を始めることをお勧めします。

まとめ

「家族滞在」ビザは、経営・管理ビザを取得した外国人経営者が家族と共に日本で暮らすための重要な制度です。配偶者と子に限定されること、扶養能力の立証が鍵となること、就労には資格外活動許可が必要であることなど、押さえておくべきポイントは少なくありません。

事業の安定性と家族の生活基盤、その両方をバランスよく示すことが、許可獲得への近道となります。経営・管理ビザの新規取得や更新と並行して家族滞在の申請を検討される方は、計画段階から書類の整合性に注意する必要があります。

行政書士事務所シクロでは、経営・管理ビザの取得支援と併せて、家族滞在ビザ、永住許可申請のサポートも手掛けています。「事業を軌道に乗せながら家族を呼び寄せたい」「申請のタイミングが分からない」といったお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。経営者ご本人の在留資格と家族の在留資格は密接に関連しますので、一体的にご支援することで、より円滑な許可取得を目指してまいります。

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