はじめに
「家族滞在ビザで来日した妻が、子どもが学校に行っている間にアルバイトをしたいと言っているのですが、大丈夫ですか?」
「子どもが高校生になったので、夏休みにアルバイトをさせたいのですが、何時間まで働けますか?」
家族滞在ビザは、原則として就労が認められていない在留資格です。しかし、「資格外活動許可」を取得すれば、一定の範囲で働くことができます。
今回は、家族滞在ビザを持つご家族のアルバイト就労について、ルールと制限を実務目線で整理します。
家族滞在ビザは原則として就労不可
家族滞在ビザは、就労系の在留資格や留学などの在留資格を持つ外国人の被扶養者として、日本に在留するための在留資格です。
出入国管理及び難民認定法の別表第一の四の表では、家族滞在の活動として、一定の在留資格をもって在留する方の扶養を受ける配偶者または子として行う日常的な活動が定められています。
そのため、家族滞在ビザのまま、資格外活動許可を受けずにアルバイトをすると、本人にとっては資格外活動の問題が生じます。また、雇用主にとっても不法就労助長罪のリスクが生まれます。これは数万円や数十万円のレベルでは済まない、重大な法令違反につながる可能性があります。
資格外活動許可とは何か
資格外活動許可とは、本来の在留資格では認められない活動を、一定の範囲で特別に認める制度です。
家族滞在ビザを持つご家族がアルバイトをするには、原則として、この資格外活動許可を取得する必要があります。
申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で行います。主な必要書類は、資格外活動許可申請書、在留カード、パスポートなどです。申請人の状況や許可の種類によって、追加資料を求められることもあります。
標準処理期間は、出入国在留管理庁の案内では2週間〜2か月とされています。許可を受けた場合は、証印シールまたは資格外活動許可書で内容を確認します。中長期在留者の場合、在留カードの裏面にも資格外活動許可の要旨が記載されます。
週28時間ルールの厳守
資格外活動許可を取得すると、家族滞在ビザを持つ方は、原則として週28時間以内のアルバイトが可能になります。
この週28時間は、許可の範囲として非常に重要な上限です。これを超えると、資格外活動許可の範囲外となり、不法就労と評価されるおそれがあります。
重要なポイントは、「週28時間」は1週間の合計時間だという点です。複数のアルバイト先で働いている場合は、すべての勤務時間を合算して28時間以内に収める必要があります。
たとえば、「A社で20時間、B社で15時間」の場合、合計35時間となり、週28時間を超えてしまいます。
ダブルワークと時間管理の罠
「うちでは週20時間だから大丈夫」と雇用主が思い込んでいても、本人が他社で別のアルバイトをしていれば、合算で28時間を超える可能性があります。
他社での勤務状況は本人の自己申告に頼らざるを得ない部分がありますが、雇用主としても、採用時に「他社での勤務時間」をヒアリングし、記録に残しておくことをおすすめします。
本人にとっても、複数アルバイトの時間管理は意外と難しいものです。シフトの記録や月次の累積時間チェックを習慣にしておくと、うっかり超過を防ぎやすくなります。
学校の長期休暇中の特例
「子どもが大学生で家族滞在ビザなのですが、夏休みは週40時間働かせてよいですか?」という質問も増えています。
結論からいうと、家族滞在ビザの方には、留学生と同じ長期休暇中の特例は適用されません。
長期休暇中に1日8時間まで認められる扱いは、留学ビザを持つ留学生について説明されることが多い制度です。家族滞在ビザの方は、資格外活動許可を受けている場合でも、原則として通年で週28時間が上限です。
この点はよく混同される論点なので、社員のご家族をアルバイトとして雇うときには、必ず在留資格の種類を確認してください。
風俗営業等への就労禁止
資格外活動許可があっても、風俗営業等に関係する活動は認められません。
出入国在留管理庁の資格外活動許可の一般原則でも、風俗営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業が営まれている営業所で行う活動や、無店舗型性風俗特殊営業等に従事して行う活動は、許可の対象外とされています。
雇用主側でも、家族滞在ビザの方を雇う際は、業務内容が風俗営業等の制限に抵触しないかを確認する必要があります。たとえば、ナイトクラブの接客スタッフ、パチンコホールの接客、いわゆる風俗業など、グレーゾーンと感じる業務は専門家に確認しましょう。
雇用主が確認すべきこと
家族滞在ビザを持つ方を雇う際に、雇用主が確認すべきポイントを整理しておきます。
1つ目は、資格外活動許可の有無です。在留カードの資格外活動許可欄、証印シール、または資格外活動許可書を確認します。許可がない場合は、雇用契約を結ぶ前に申請してもらう必要があります。
2つ目は、週合計時間の管理です。複数アルバイトの可能性を考慮して、本人に他社勤務状況をヒアリングし、記録します。
3つ目は、業務内容の確認です。風俗営業等に関係する活動ではないことを確認します。
これらをチェックリスト化しておけば、家族滞在ビザの方を安全に雇用しやすくなります。
違反時のペナルティは雇用主にも及ぶ
資格外活動許可がない、または週28時間を超えて働かせていることが入管に把握されると、本人だけでなく雇用主にも厳しい結果が及ぶ可能性があります。
本人については、在留資格の取消しや退去強制手続につながるリスクがあります。雇用主については、不法就労助長罪により、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
「知らなかった」という説明だけで責任を免れられるとは限りません。雇用主としては、在留カードや資格外活動許可の確認、勤務時間の管理を記録として残すことが重要です。
アルバイトからキャリアアップの可能性
家族滞在ビザでアルバイトを続ける中で、「もっと働きたい」「フルタイムで活躍したい」と思うようになる方もいらっしゃいます。
その場合は、技術・人文知識・国際業務や特定技能など、就労系の在留資格への変更を検討できます。ただし、在留資格の変更は、本人の学歴・職歴、仕事内容、雇用契約の内容などによって判断されるため、必ず変更できるとは限りません。
ご家族のキャリア形成は、雇用主側にとっても有能なスタッフを確保する好機です。アルバイトとして始まった関係が、在留資格の変更を経てフルタイムの正社員に発展するケースもあります。
専業主婦/主夫からのキャリア再スタート
配偶者が日本に来日した当初は、子育てや日本語学習に集中する方も多いです。その後、子どもが学校に通うようになって時間ができたタイミングで、社会復帰したいという声をよく聞きます。
家族滞在ビザのままアルバイトから始めるのか、就労ビザに変更してフルタイムで働くのかは、本人のキャリアプランや日本語レベル、専門性によって変わります。
アルバイトから始めて職場での実績を積み、その実績を活かして就労ビザに変更する、というステップを踏むケースもあります。雇用主側としても、最初はアルバイトで様子を見ながら、本人の意欲と能力に応じて正社員雇用と就労ビザ変更を提案するという流れが現実的です。
文化的・宗教的配慮も視野に
家族滞在ビザのご家族をアルバイトとして受け入れる際は、就労ルールだけでなく、宗教上の祈祷時間や食事の制限、家族行事に伴う長期休暇など、文化的な背景に配慮することも大切です。
日本人スタッフと同じ働き方を一方的に求めるのではなく、お互いに歩み寄れるシフト体制を整えることで、長く働いてもらえる関係性が築きやすくなります。
アルバイト管理に役立つ実務テンプレ
雇用主が家族滞在ビザのご家族をアルバイトとして雇うときに、社内で標準化しておくと便利なテンプレートを3つご紹介します。
1つ目は「ビザ確認シート」です。在留カードの表裏のコピーと、資格外活動許可の有無、在留期限を1枚にまとめる書式です。これを採用時に必ず作成し、ファイルしておきます。
2つ目は「他社勤務時間ヒアリングシート」です。本人にダブルワークの有無を確認し、他社の勤務先名、勤務時間を月単位で記録するシートです。
3つ目は「シフト累積時間表」です。当月の累積時間を週単位で記載し、28時間に近づいたらアラートを出す仕組みです。
これらは月次でのチェックを習慣化すれば、うっかり超過のリスクを大幅に下げられます。
まとめ
家族滞在ビザでのアルバイトは、「資格外活動許可」+「週28時間以内」のルールを守れば可能です。
複数アルバイトの合算時間、長期休暇中も原則として上限が変わらないこと、風俗営業等に関係する活動が認められないこと、雇用主にも責任が及び得ること。この4つのポイントを押さえることで、本人にも雇用主にも安心できる雇用管理に近づきます。
アルバイトから正社員雇用への発展や、ご家族のキャリア相談など、家族滞在ビザに関連するご相談は、行政書士事務所シクロまでお気軽にお寄せください。
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