経営管理ビザで日本に在留し、会社を経営している外国人経営者の方にとって、ビザ更新の準備は「いつから始めるか」が非常に重要です。
特に意識したいのが、自社の決算期と、経営者本人の在留期限です。
経営管理ビザの更新では、会社が法人登記されていることだけでなく、実際に事業が継続しているか、直近の決算内容をどう説明できるか、今後も安定して事業を続けられる見込みがあるかが確認されます。
そのため、更新期限が近づいてから慌てて資料を集めるのではなく、自社の決算期を基準に、売上・経費・契約・雇用・納税状況を早めに整理しておくことが大切です。決算書類、事業実態資料、事業計画書などは、更新申請の説得力を左右する重要な資料になります。
本記事では、経営管理ビザの更新を見据えて、会社の決算期と在留期限から逆算しながら、どのように事業実態を整理し、経営改善に取り組むべきかを実務的な視点から解説します。これから更新を迎える方、あるいはすでに更新準備を進めている方は、自社のスケジュールに当てはめながら確認してみてください。
経営管理ビザ更新で重要なのは「決算期」と「在留期限」
経営管理ビザの更新準備でまず確認すべきなのは、自社の決算期と、経営者本人の在留期限です。
法人にはそれぞれ決算期があり、決算月は会社によって異なります。また、在留期限も経営者ごとに異なります。そのため、更新準備は一律の時期で考えるのではなく、自社の決算期と在留カードの期限を照らし合わせて進める必要があります。
在留資格「経営・管理」の在留期間は、5年・3年・1年・6月・4月・3月のいずれかです。実務上は、1年または3年の在留期間で更新を重ねながら、事業を継続している方も少なくありません。更新審査では、「その会社が実際に事業を継続しているか」「経営者本人が事業に関与しているか」「今後も日本で事業を継続できる見込みがあるか」が重要になります。
特に、在留期限が決算期の直後に来る場合や、直近期の決算が赤字になる見込みがある場合、売上や契約状況に不安がある場合には、早めの対策が必要です。決算が終わってから対応するのではなく、決算前の段階で事業実態を整理し、必要に応じて事業計画や資料の見直しを行っておきましょう。
決算内容は更新申請の重要な説明材料になる
経営管理ビザの更新では、直近の決算書、法人税の確定申告書、事業実態を示す契約書・請求書・取引履歴、事務所に関する資料、雇用関係書類、事業計画書などが重要になります。
これらの資料は、短期間で整えられるものではありません。日々の取引、売上、経費、役員報酬、納税、社会保険、雇用状況などが積み重なって、更新申請時の説明材料になります。
決算期が近づいてから帳簿や請求書を探し始めると、資料の不足や説明の矛盾が見つかることがあります。更新申請に向けては、決算期の前から資料を整理し、直近期の決算内容をどのように説明するかを考えておくことが大切です。
在留期限から逆算して準備する
在留期間更新許可申請は、原則として在留期間満了のおおむね3か月前から可能です。ただし、申請できる時期になってから準備を始めると、決算書類、事業実態資料、事業計画書、雇用関係書類などの整理が間に合わないことがあります。
特に、決算処理や確定申告の時期と在留期限が近い場合は注意が必要です。税理士から決算書が出る時期、法人税の申告時期、登記事項証明書の取得時期、事業計画書の作成時期をあらかじめ確認し、更新申請までのスケジュールを組んでおきましょう。
更新準備は、在留期限だけを見るのではなく、決算期、税務申告、資料作成、専門家への相談時期を含めて逆算することが重要です。
ビザ更新審査で問われる「事業の実態」とは
経営管理ビザの更新を申請すると、入管は「その外国人が引き続き日本で事業を適正に営んでいるか」を確認します。会社が法人登記されていることは重要な前提ですが、登記があるだけで十分というわけではありません。
経営管理ビザでは、会社が形式的に存在しているだけでなく、実際に事業が継続しているか、売上や取引の実態があるか、経営者本人が事業に関与しているか、事務所や会計資料が整っているかといった点が確認されます。
事業の継続性
経営管理ビザの更新で審査で重要になるのは、登記された会社が実際に事業を継続しているか、経営者本人がその事業に関与しているか、そして事業を安定して続けられる体制が整っているかという点です。
特に2025年10月16日施行の改正後は、事業規模や事業体制について、より具体的な確認が行われます。法人で事業を行う場合は、資本金の額または出資の総額が3,000万円以上であることが求められます。
個人で事業を行う場合についても、出入国在留管理庁の説明では、事業所の確保、雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額が3,000万円以上であることが示されています。
ただし、どの費用をどの範囲で「事業の用に供される財産の総額」として説明できるかは、個別の事業内容や資料の整合性によって判断されます。そのため、単に支出額を合算するのではなく、事業に必要な投下資金であることを契約書、支払資料、雇用関係資料、設備資料などで説明できるようにしておくことが重要です。
そのため、更新準備では、単に会社が存在していることを示すだけでは不十分です。直近の決算内容、売上・契約・取引の実態、事務所の使用状況、雇用状況、公租公課の履行状況、社会保険・労働保険の加入状況、今後の事業計画などを総合的に整理しておく必要があります。
具体的には、次のような点を確認しておきましょう。
* 直近の決算内容を説明できるか
* 売上、契約、請求、入金の流れを資料で示せるか
* 事務所としての独立性・継続性を説明できるか
* 常勤職員の雇用状況を説明できるか
* 労働保険・社会保険の加入状況や納付状況に問題がないか
* 法人税、消費税、法人住民税、法人事業税などの納税状況に問題がないか
* 事業計画に具体性、合理性、実現可能性があるか
* 経営者本人の経営経験・学歴、日本語能力など、改正後の確認事項に対応できるか
売上が極端に少ない状態が続いている場合や、事務所の実態が確認しにくい場合だけでなく、税金や社会保険の未納、雇用関係資料の不足、事業計画の不明確さがある場合も、更新審査で不利に見られる可能性があります。
経営管理ビザの更新では、「会社を作っているか」よりも、「その会社で実際に事業を継続できているか」を説明できることが重要です。
事務所の要件
2025年10月16日施行の制度改正以降、経営管理ビザでは、事業所としての実態や独立性がより慎重に確認される傾向があります。自宅を事務所として使っている場合は、賃貸借契約書、使用区分の説明資料、事務所としての独立性を示す資料などを整理し、現在の基準に照らして問題がないかを早めに確認しておく必要があります。
特に、住居専用の物件を事務所として利用している場合や、事業用スペースと生活スペースの区分が不明確な場合は、更新前に専門家へ相談することをおすすめします。
レンタルオフィスやシェアオフィスを利用している場合も、契約内容や利用形態によって説明資料が必要になることがあります。契約上、事業利用が認められているか、法人登記が可能か、専用スペースや業務実態を説明できるかを確認しておきましょう。
経営者としての関与
「経営・管理」ビザとして認められるためには、実際に経営判断・管理業務に関わっていることが必要です。名ばかりの代表者ではなく、実際に意思決定を行い、事業の先頭に立っていることを書類や説明で示せるようにしておきましょう。
たとえば、取引先との契約交渉、資金計画、人員配置、売上管理、事業方針の決定などにどのように関わっているかを、事業報告や説明書の中で具体的に示すことが有効です。
経営者本人が実際にどのような業務を行っているか、どのように売上を作っているか、誰と取引しているか、今後どのように事業を継続していくかを説明できるようにしておくことが、更新申請では重要になります。
決算期前に取り組むべき経営改善の具体策
更新審査を乗り越えるためには、書類の準備だけでなく、事業の実態そのものを整えることが重要です。自社の決算期と在留期限から逆算し、早めに取り組むべき具体的な施策を確認しておきましょう。
売上・収益の記録整備
毎月の売上記録、請求書・領収書の整理を徹底します。会計ソフトを活用し、日々の仕訳を滞りなく行うことで、決算期に慌てない体制を作りましょう。
特に外国人経営者の場合、日本語での会計処理に不安があることも少なくありません。税理士などの専門家との連携を早期に確立し、売上、経費、役員報酬、税金、社会保険料の状況を定期的に確認しておくことをおすすめします。
売上があるにもかかわらず請求書や入金記録が整理されていない場合、事業実態の説明が弱くなります。逆に、売上がまだ大きくない場合でも、契約書、見積書、取引先とのやり取り、営業活動の記録などを残しておけば、事業を継続していることを補足的に説明しやすくなります。
事業計画書の見直しと専門家確認
当初の事業計画書と現在の実績を比較し、乖離がある部分を確認します。計画どおりに進んでいない部分については、理由と今後の対応策をまとめておく必要があります。
2025年10月16日施行の改正後は、事業計画書について、事業の具体性・合理性・実現可能性があることを、中小企業診断士、公認会計士または税理士が確認することが求められます。そのため、更新準備では、単に事業計画書を作り直すだけでなく、専門家による確認を受けることも視野に入れて準備を進める必要があります。
更新申請時に「前回の計画と現在の実績の整合性」を説明できないと、事業の継続性や実現可能性に疑問を持たれることがあります。売上目標、取引先、商品・サービス、雇用計画、資金繰り、資本金等3,000万円の使途、常勤職員の雇用状況、日本語対応体制などを現状に合わせて見直し、専門家が確認できる程度に具体的で合理的な内容に整えておきましょう。
特に、設立当初と現在で事業内容が変わっている場合は注意が必要です。事業内容の変更自体が直ちに問題になるわけではありませんが、なぜ変更したのか、現在の事業がどのように収益につながっているのか、今後どのように継続していくのかを、客観的な資料とともに説明できるようにしておく必要があります。
なお、税理士や会計士に日常の会計処理を依頼している場合でも、事業計画書の確認は、単なる決算書作成や税務申告とは別の観点で行われます。収支計画、資金繰り、事業内容、雇用計画、投資内容などについて、計画全体に具体性・合理性・実現可能性があるかを確認してもらう必要があります。
事業計画書の作成にあたっては、当事務所の関連記事「【シリーズ:事業計画書の極意 第1回】」でも、改正後の経営管理ビザにおける事業計画書の役割や、専門家確認を前提とした計画書作成の考え方を詳しく解説しています。
雇用関係の整理
従業員を雇用している場合は、労働契約書、社会保険の加入状況、給与台帳、源泉徴収関係書類が整っているか確認します。雇用の実態も、事業の規模・継続性を示す重要な根拠となります。
2025年10月16日施行の改正後は、常勤職員の有無や日本語能力に関する資料が確認対象となる場面もあります。常勤職員を雇用している場合は、賃金支払に関する資料、住民票、社会保険関係資料などを早めに整理しておきましょう。
また、従業員がいるにもかかわらず、労働条件通知書や雇用契約書が整っていない場合、雇用実態の説明が不十分になる可能性があります。給与の支払い、勤務実態、社会保険・労働保険の加入状況についても、決算期前から点検しておくことが大切です。
事務所環境の点検
事務所の賃貸借契約が更新時期を過ぎていないか、表札・看板・電話回線・郵便物の受取体制など、事務所としての体裁が整っているかを確認します。
入管から現地確認が行われるケースは多くありませんが、「事務所の実態がある」ことを書類や写真で説明できる準備が必要です。賃貸借契約書、事務所写真、平面図、使用許可に関する資料などを整理しておくと、説明の精度が高まります。
特に、自宅兼事務所、レンタルオフィス、シェアオフィスを利用している場合は、契約内容や利用形態によって説明資料が必要になることがあります。契約上、事業利用が認められているか、法人登記が可能か、専用スペースや業務実態を説明できるかを確認しておきましょう。
よくある落とし穴と対処法
多くの外国人経営者が、決算期や更新時期の前に経験しやすい問題と、その対処法を整理します。
落とし穴①:決算の遅れ
多忙な事業運営の中で、帳簿整理・決算処理が後回しになるケースがあります。税理士への依頼は早めに行い、決算期の前から確定申告や決算処理の目途を立てておくことが理想です。
決算が遅れると、更新申請時に必要な資料の準備も遅れます。会計資料は月ごとに整理し、領収書や請求書の不足がないか早めに確認しておきましょう。
また、赤字決算となる場合でも、すぐに更新が不可能になるとは限りません。ただし、赤字の理由、資金繰り、今後の改善見込み、事業継続の可能性を説明できるようにしておく必要があります。赤字決算が見込まれる場合こそ、早めの準備が重要です。
落とし穴②:事業計画書の放置
設立当初に作成した事業計画書を、そのまま更新申請に流用しようとするケースがあります。実績と乖離した計画書は、審査に悪影響を及ぼす可能性があります。
必ず最新の実績を反映した更新版を作成し、未達成の項目については原因と改善策を説明できるようにしておきましょう。
たとえば、当初予定していた商品やサービスが想定どおりに売れていない場合、単に計画を修正するだけでは不十分です。市場環境、取引先の変化、営業方法の見直し、新たな収益源などを整理し、現実的な事業計画として説明できる内容にしておくことが大切です。
落とし穴③:ビザ期限の見落とし
多忙な事業運営の中でビザの期限を見落とし、申請タイミングを逃すケースが実際に発生しています。在留カードの期限を必ずカレンダーに登録し、更新申請が可能となる時期より前から資料準備を始める習慣をつけましょう。
在留期間更新許可申請は、原則として在留期間満了のおおむね3か月前から可能です。申請可能時期になってから慌てるのではなく、自社の決算期と在留期限を照らし合わせ、必要資料を早めに洗い出しておくことが重要です。
特に、在留期限が決算申告の直後に来る場合や、税理士から決算書が出る時期と更新申請の時期が重なる場合は、スケジュールに余裕を持たせる必要があります。
落とし穴④:家族の在留資格への影響
配偶者や子どもが「家族滞在」ビザで在留している場合、経営者本人のビザが更新されないと、家族の在留資格にも影響が及ぶ可能性があります。家族がいる場合は特に、余裕を持った更新準備が不可欠です。
家族の在留期限、学校や勤務先の予定、海外渡航予定なども合わせて確認し、家族全体の在留スケジュールを管理しておきましょう。
本人の経営管理ビザの更新準備が遅れると、家族の更新準備にも影響します。特に子どもの進学、配偶者の就労予定、海外出張や一時帰国の予定がある場合は、家族全体のスケジュールを早めに整理しておくことが重要です。
決算期・在留期限から逆算するビザ更新チェックリスト
以下のチェックリストを活用して、更新準備の進捗を確認してください。ポイントは、自社の決算期と在留期限を基準にすることです。
- 自社の決算月を確認している
- 在留カードの期限を確認している
- 決算期と在留期限を並べて、更新準備のスケジュールを作成している
- 直近の決算書(貸借対照表・損益計算書)の準備ができている、または準備時期を把握している
- 法人税・消費税など、必要な税務申告の状況を確認している
- 登記事項証明書(発行日から3か月以内のもの)を取得済み、または取得予定がある
- 事業実態を示す書類(契約書・請求書・取引明細)が整理されている
- 売上が少ない場合でも、営業活動・契約見込み・取引交渉の資料を整理している
- 事務所の賃貸借契約書が最新のものに更新されている
- 事務所の写真、平面図、使用区分の説明資料を準備できる
- 雇用している従業員の労働契約書・社会保険書類・給与台帳が整っている
- 常勤職員、日本語能力、経歴・学歴など、改正後基準に関係する資料の要否を確認している
- 最新の事業計画書(実績反映済み)が作成され、税理士等に確認の依頼をしている
- 前回申請時の事業計画と現在の実績に乖離がある場合、その理由と改善策を整理している
- 赤字決算や売上減少がある場合、その原因と今後の改善見込みを説明できる
- 在留カードの期限を確認し、更新準備と申請時期をカレンダーに登録した
行政書士への相談をお勧めするタイミング
経営管理ビザの更新は、提出書類の量と精度が結果を大きく左右します。自分で申請することも可能ですが、「どの書類が審査で重視されるか」「どう事業実態を説明するか」という実務的な判断には、経験豊富な行政書士のサポートが有効です。
特に以下のようなケースでは、早めの相談をお勧めします。
- 直近期の赤字決算がある場合
- 事業内容が当初計画から変わっている場合
- 自宅兼事務所で事業を運営している場合
- 常勤職員の雇用、日本語能力、経歴・学歴など、改正後基準への対応に不安がある場合
- 前回の更新時に指摘事項があった場合
- 在留資格の種類変更(例:就労ビザから経営管理ビザへの切り替え)を検討している場合
- 決算期と在留期限が近く、どの順番で準備すべきかわからない場合
- 会社は登記しているものの、売上・契約・事務所実態の説明に不安がある場合
早めに相談することで、不足資料の洗い出しや事業計画書の見直し、審査で説明すべきポイントの整理を余裕を持って進めることができます。
経営管理ビザでは、「法人を経営している」、それだけで更新審査を乗り切れるとは限りません。会社として実際に事業が動いていること、経営者本人が経営に関与していること、直近期の決算や今後の計画を合理的に説明できることが求められます。
まとめ
経営管理ビザの更新準備で大切なのは、自社の決算期、経営者本人の在留期限、直近期の決算内容、そして更新申請時点で説明できる事業実態です。
法人にはそれぞれ決算期があり、在留期限も経営者ごとに異なります。そのため、更新準備は一律の時期で考えるのではなく、自社の決算期と在留期限から逆算して進めることが実務上は適切です。
決算書類の整備、事業計画書の更新、事務所要件の確認、雇用・社会保険・税務関係の整理など、やるべきことは多岐にわたります。特に2025年10月16日施行の改正後は、経営管理ビザに関する確認事項がより細かくなっています。更新期限が近づいてから慌てるのではなく、自社の決算期と在留期限から逆算して、必要な資料と改善策を整えておくことが大切です。
行政書士事務所シクロでは、経営管理ビザの更新申請に関するご相談を承っています。「何から始めればいいかわからない」「決算期とビザ更新のタイミングが近くて不安」「会社は登記しているが、事業実態をどう説明すればよいかわからない」という段階からでも、丁寧にお話を伺い、最適なサポートをご提案します。
経営管理ビザの更新は、会社ごとの事情によって準備すべき内容が変わります。自社の決算期と在留期限を確認したうえで、早めに一度ご相談ください。
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