はじめに
中古品の売買・交換を事業として行うには、「古物商許可」が必要です。フリマアプリやネットオークションが普及した現代において、中古品ビジネスは外国人起業家にとっても人気の選択肢となっています。しかし、古物商許可の申請には独自の要件があり、外国人特有の注意点も少なくありません。
本記事では、古物商許可の基本的な手続きから、在留資格との関係、外国人が特に注意すべきポイントまでを実務的な視点で解説します。中古品ビジネスへの参入を検討している外国人の方、あるいはその支援をされている方に、ぜひお読みいただきたい内容です。
古物商許可とは
「古物商」とは、古物(一度使用された物品や、未使用であっても使用のために取引された物品など)の売買、交換、委託を受けて売買・交換を業として行う者のことです。古物営業法に基づき、都道府県公安委員会の許可を取得しなければ、古物の売買等を業として行うことはできません。
対象となる「古物」は、古物営業法施行規則上、以下の13品目に分類されています。
- 美術品類
- 衣類
- 時計・宝飾品類
- 自動車
- 自動二輪車及び原動機付自転車
- 自転車類
- 写真機類
- 事務機器類
- 機械工具類
- 道具類
- 皮革・ゴム製品類
- 書籍
- 金券類
これらに該当する商品を仕入れて転売する事業を行う場合は、原則として許可を受ける必要があります。
無許可で営業した場合は古物営業法違反となり、三年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金が科される可能性があります。
なお、古物商許可は、出入国管理及び難民認定法(入管法)上の在留資格とは別の許可制度です。ただし、外国人が日本で古物ビジネスを行う場合には、古物商許可だけでなく、現在の在留資格でその事業活動を行えるかという点も重要になります。この点は後述します。
申請先と主な書類
古物商許可の申請先は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会です。実務上は、営業所を管轄する警察署の防犯係・生活安全課などが窓口になります。
申請に必要な主な書類
個人として申請する場合、一般的には以下の書類が必要です。必要書類や様式は都道府県警察によって異なる場合があるため、申請前に管轄警察署へ確認してください。
- 古物商許可申請書
- 住民票の写し(日本人は本籍記載、外国人は国籍等記載のもの)
- 身分証明書(本籍地の市区町村が発行するもの。外国籍の方は取得できない場合があるため、取扱いを事前に管轄警察署へ確認)
- 誓約書
- 略歴書
- 営業所の使用権限を確認できる資料(賃貸借契約書のコピー、使用承諾書など)
- ホームページを利用して古物営業を行う場合は、URLの使用権限を疎明する資料
法人として申請する場合は、上記に加えて、法人の登記事項証明書、定款のコピー、役員全員分の住民票・誓約書・略歴書等が必要になります。また、営業所ごとに管理者を選任する必要があり、管理者についても必要書類を準備します。
申請手数料は19,000円で、審査期間はおおむね40日程度です。ただし、追加書類の提出を求められた場合や、申請内容に確認事項がある場合は、さらに時間がかかることがあります。
外国人が古物商許可を申請する際の特有の注意点
在留資格との関係
外国人が日本で事業を行う場合、適切な在留資格を持っていることが前提となります。古物商許可を取得しても、在留資格上その事業活動が認められない場合、実際に営業を行うことはできません。
中古品ビジネスを個人または法人として経営する場合、在留資格「経営・管理」の該当性を検討するケースが多くあります。現在の「経営・管理」では、事業所の確保、資本金等の額、常勤職員の雇用、日本語能力、事業計画の合理性など、複数の観点から確認が必要になります。特に、令和7年10月16日施行の基準改正後は、資本金等3,000万円以上、1人以上の常勤職員の雇用、経営者または常勤職員の日本語能力などが重要な確認事項となっています。
一方で、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など、就労活動に制限のない在留資格を持つ方については、在留資格との関係が異なる場合があります。また、留学、家族滞在、技術・人文知識・国際業務などの在留資格で在留している方が、在留資格の範囲を超えて事業を行うことは問題となる可能性があります。
在留資格を持たずに、または在留資格の範囲を超えて事業を行った場合には、不法就労や在留資格違反として厳しい処分の対象となるおそれがあります。古物商許可と在留資格の両方をきちんと整備することが、適法な事業運営の大前提です。
欠格事由への該当確認
古物商許可には、法律で定められた「欠格事由」があります。以下のいずれかに該当する場合は、許可を受けることができません。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 拘禁刑以上の刑や一定の犯罪で罰金刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
- 集団的・常習的に暴力的不法行為等を行うおそれがある者
- 暴力団員等
- 住居の定まらない者
- 古物営業の許可を取り消されてから5年を経過しない者
- 心身の故障により古物商等の業務を適正に実施できない者
- 営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者
- 営業所ごとに管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者
- 法人の役員に上記の欠格事由に該当する者が含まれる法人
外国籍の方の場合も、欠格事由への該当確認は当然に行われます。提出書類や確認事項について、国籍、在留状況、役員構成などに応じて追加説明を求められることがありますので、早めに管轄警察署へ確認し、準備を進めることが大切です。
住民票・身分証明書の取得
日本に適法に在留し、住民基本台帳に登録されている外国人の方は、住民票の写しを取得できます。古物商許可申請では、日本人の場合は本籍が記載された住民票、外国籍の方の場合は国籍等が記載された住民票の写しが求められます。
身分証明書は、本籍地の市区町村が発行する、成年被後見人・被保佐人・破産者でないことを証明する書類です。外国籍の方には日本の本籍地がないため、身分証明書を取得できない場合があります。この場合の取扱いは都道府県警察によって異なることがあるため、事前に申請先の警察署へ確認することを強くお勧めします。
古物の仕入れ・転売における注意事項
外国人が古物ビジネスを行う上で特に多いのが、母国への輸出転売を目的とするビジネスモデルです。日本の中古品を買い集めて本国に輸出する場合も、日本国内で古物を業として買い受ける段階で古物商許可が必要になります。
輸出入に関する手続き、関税、輸出先国の規制、品目ごとの規制などは別途確認が必要ですが、まず日本国内で古物を仕入れる段階で許可が問題になる点を忘れないようにしてください。
また、ネットを通じた海外販売を行う場合でも、日本国内で仕入れを行う以上、古物商許可の対象となる可能性があります。「自分はネット販売だから不要」という誤解が多いため、ご注意ください。
申請の流れ(ステップガイド)
古物商許可申請の一般的な流れを整理します。
ステップ1:必要書類の収集
住民票、身分証明書、略歴書、誓約書、営業所の使用権限を確認できる資料などを準備します。法人申請の場合は、登記事項証明書、定款、役員全員分の書類も必要です。
ステップ2:申請書類の作成
申請書、誓約書、略歴書などを作成します。取り扱う古物の品目、営業所、管理者、ホームページ利用の有無などを正確に記載します。
ステップ3:警察署への申請
主たる営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係・生活安全課などへ申請します。申請方法は管轄によって異なる場合があるため、事前に予約や提出方法を確認しておくと安心です。
ステップ4:審査
審査期間はおおむね40日程度です。申請内容に不備がある場合や、営業所の使用権限、管理者、在留資格との関係などについて確認が必要な場合は、追加書類の提出を求められることがあります。
ステップ5:許可証の交付
許可が下りたら、許可証を受け取り、古物営業を開始できます。営業開始後も、古物台帳(取引記録)の作成・保存義務、取引相手の本人確認義務、不正品の疑いがある場合の申告義務など、継続的に遵守すべき義務があります。
古物商許可と会社設立・経営管理ビザの組み合わせ
外国人が中古品ビジネスで本格的に起業する場合、会社設立、在留資格「経営・管理」の申請、古物商許可申請を矛盾なく組み合わせることが重要です。
典型的には、まず事業内容、仕入れ方法、販売方法、輸出の有無、営業所、資金計画を整理します。その上で、法人を設立するのか、個人事業として始めるのか、現在の在留資格で事業活動が可能か、在留資格「経営・管理」への変更や認定証明書交付申請が必要かを検討します。
外国人の会社設立については、行政書士事務所シクロでもご相談を承っています。在留資格「経営・管理」の申請を行う場合は、事業所の確保、資本金等3,000万円以上、1人以上の常勤職員の雇用、経営者または常勤職員の日本語能力、事業計画の合理性など、現在の基準を踏まえた準備が必要です。
法人として古物商許可を取得する場合は、代表者をはじめ役員全員が欠格事由に該当しないことの確認と書類準備が必要です。役員が複数人いる場合は、それぞれの書類を漏れなく揃えなければなりません。
また、在留資格「経営・管理」の申請書類のひとつである事業計画書には、古物ビジネスの収支計画、仕入れルート、販売戦略、在庫管理、輸出を行う場合の取引スキームなどを具体的に記載することが求められます。ビジネスモデルが明確であるほど、審査上も説明しやすくなります。
詳しくは「【外国人起業家向け】経営管理ビザと会社設立:法務局の書類集め&取得方法を徹底解説!」もご参照ください。
まとめ
中古品ビジネスは、日本に在住する外国人起業家にとって比較的参入しやすい業種のひとつです。しかし、事業を適法に行うためには、古物商許可と在留資格(在留資格「経営・管理」等)の両方を適切に整備する必要があります。
特に、外国人が中古品を仕入れて販売・輸出するビジネスを行う場合、古物営業法上の許可だけでなく、在留資格上その事業を行えるか、会社設立や事業所の準備が整っているか、資金計画や事業計画に無理がないかを総合的に確認することが重要です。
書類収集から申請・審査まで、独力で進めるのが難しいと感じた場合は、早めに専門家へ相談することをお勧めします。行政書士事務所シクロでは、外国人起業家の古物商許可申請のサポートも行っています。在留資格の手続きと組み合わせて、スムーズな起業をバックアップします。
お気軽に行政書士事務所シクロへご相談ください。
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