【2024年改正・2027年4月施行予定】税金未納で永住権が取り消される?永住者が守るべき義務

公開日:2026年8月19日

「永住権を取得すれば、あとは安心」長年そう考えられてきました。しかし、2024年の入管法改正により、この認識は大きく見直す必要があります。

今回の改正では、税金や社会保険料などの公的な支払義務を故意に履行しない永住者について、在留資格の取消しや、永住者以外の在留資格への職権による変更を可能とする制度が整備されました。関連規定は、2027年4月1日から施行される予定です。

本記事では、改正の概要と永住者が今後注意すべきポイントを解説します。

2024年法改正の概要

永住者の在留資格は、これまで「一度取得すれば取り消されることはほとんどない」と考えられてきました。実際、永住者について在留資格取消しが問題となる場面は、虚偽申請など限定的な場合が中心でした。永住許可は、日本での在留期間の制限がなく、就労制限もないという点で、外国人にとって最も安定した在留資格の一つとされてきた経緯があります。

しかし近年、永住者が公租公課(税金や社会保険料など、公的に納める金銭上の義務)を履行しない一部の事案が問題視されるようになりました。これを受けて、出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の改正により、永住者が入管法上の義務を遵守しない場合や、故意に公租公課の支払をしない場合について、在留資格取消しの対象となり得る制度が整備されています。

また、取消し事由に該当する場合でも、直ちに退去を前提とするものではありません。改正後の制度では、永住者について一定の取消し事由が判明した場合、引き続き日本に在留することが適当でないと認められる場合を除き、法務大臣が職権で永住者以外の在留資格への変更を許可する仕組みも設けられています。

この改正は、永住者の権利を不当に制限することを目的としたものではなく、日本社会における公的義務の履行を、在留管理制度の中でも明確に位置づける趣旨によるものです。永住許可を得た後も、日本社会の一員として一定の責務を継続的に果たすことが前提とされている点を、あらためて確認しておく必要があります。

永住権が取り消され得る具体的なケース

税金の未納

住民税や所得税などについて、支払義務を認識していながら、正当な理由なくあえて納付しない状態が続いている場合、悪質性が高いと判断されれば、在留資格取消しの対象となり得ます。

単なる納付の遅れや、経済的な事情による一時的な滞納が、直ちに取消しに直結するわけではありません。しかし、督促を受けても意図的に無視する、納付能力があるにもかかわらず支払わない、複数年にわたり滞納が続き催告にも応じないといった場合には、故意性が疑われる要素となります。

特に、未納の理由を説明できないまま放置している状態は、在留状況の適正性を判断するうえで大きなリスクになります。

社会保険料の未納

国民健康保険、国民年金、厚生年金保険料などについても注意が必要です。公的医療保険や公的年金の保険料は、永住許可申請の審査でも重視されてきた項目であり、改正後の在留管理においても重要な確認対象となり得ます。

自身の保険料を長期にわたり納付していない場合だけでなく、会社経営者である永住者の場合には、会社として社会保険の加入義務を適切に履行しているかも問題となる可能性があります。事業主として従業員の社会保険加入手続きを怠っている場合や、会社としての納付管理が不十分な場合には、自身の在留状況や永住者としての適正性を説明するうえで不利に働くおそれがあります。

会社経営者である永住者は、自身の納付状況だけでなく、事業主としての適正な労務管理も含めて確認しておくことが重要です。

その他の考慮要素

税金・社会保険料以外にも、入管法上の住居地届出など、在留管理に関する義務を故意に怠っている場合は、在留状況の適正性を判断する材料となり得ます。永住者であっても、日本に居住する以上、各種届出義務は継続して発生します。

また、長期間日本を出国している場合には、再入国許可の有無や在留実態との関係で、別途注意が必要になることがあります。永住者であっても、日本での生活実態や公的義務の履行状況が、今後より重視される流れにあると考えておくべきです。

なぜこの改正が行われたのか

今回の改正の背景には、永住者数の増加に伴い、公的義務を履行しない一部のケースが社会的な課題として指摘されてきた経緯があります。多くの永住者は真摯に納税・社会保険料の支払いを行っていますが、一部の未納事案が制度全体への信頼を損ないかねないとの懸念から、行政としての対応強化が図られました。

重要なのは、今回の制度が「うっかり納付が遅れた」ことを直ちに問題視するものではなく、「支払義務を認識していながら、正当な理由なくあえて支払わない」という悪質なケースを主な対象としている点です。とはいえ、滞納が長期化・常態化すれば、故意性が疑われるリスクは高まりますので、日頃からの適正な対応が重要になります。

また、今回の改正では、永住許可申請においても「入管法上の義務の遵守」や「公租公課の支払等」が法律上明確化されています。そのため、これから永住許可を申請しようとする方にとっても、納税状況や社会保険料の納付状況は、これまで以上に注意すべきポイントになります。

家族滞在などの形で永住者の扶養に入っている家族がいる場合にも、扶養者としての収入状況や納付状況が、申請内容や世帯状況の説明に影響することがあります。永住者自身だけでなく、世帯としての適正な納付管理を心がけることが望ましいといえるでしょう。

永住者が今すぐ確認すべきこと

今回の改正を踏まえ、永住者の方には次の点を確認することをおすすめします。

まず、住民税・所得税に未納がないか、納税証明書等で現状を把握することが重要です。次に、国民健康保険・国民年金・厚生年金保険料について、納付状況に漏れがないかを確認しましょう。会社を経営している方は、従業員の社会保険加入手続きや、会社としての社会保険料の納付状況が適正に管理されているかどうかも、あわせて点検する必要があります。

また、転居した際の住居地届出など、行政への各種届出が漏れていないかも見直しておくと安心です。住所変更の手続き漏れは、納付書や重要な通知が届かない原因にもなり得ます。

万が一、経済的な事情で納付が難しい状況にある場合は、放置せず、自治体や年金事務所の窓口に相談し、分割納付や猶予制度などを活用できないか確認することが望ましい対応です。滞納を放置せず、早期に相談・対応した実績があるかどうかは、故意性の有無を判断するうえでも重要な要素となり得ます。

万が一の場合の対応

在留資格の取消しに関する手続きは、対象者に対する意見聴取など、一定の手続的保障を伴って進められます。仮に取消しの検討対象となる通知を受けた場合でも、直ちに全てが決定するわけではなく、事情を説明する機会が設けられます。

こうした場面では、専門家である行政書士に早めに相談し、必要な資料の整理や今後の対応方針を検討することが重要です。特に、滞納に至った経緯、現在の納付状況、今後の納付計画、自治体や年金事務所との相談履歴などを整理し、客観的な資料とともに説明できるよう準備しておくことが望ましいといえます。

制度の詳細や最新の運用状況は、出入国在留管理庁の発表内容もあわせてご確認ください。行政書士事務所シクロでは、永住者の方からの在留資格に関するご相談についても対応しております。納付状況に不安がある方、届出漏れが心配な方は、お早めにご相談ください。

まとめ

2024年の入管法改正により、税金や社会保険料などの公的義務の故意の不履行が、永住者の在留資格に影響を及ぼす可能性がある制度が整備されました。関連規定は2027年4月1日から施行される予定であり、永住者の方は施行前から納付状況や届出状況を確認しておくことが大切です。

永住権は一度取得すれば終わりというものではなく、日本社会の一員として公的義務を継続的に果たしていくことが、その安定した維持につながります。

納税や社会保険料の支払い状況に不安がある方、在留資格全般についてご相談されたい方は、行政書士事務所シクロまでお気軽にお問い合わせください。詳しいサービス内容は、行政書士事務所シクロの公式サイトでもご確認いただけます。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案については最新の法令および所轄行政機関の情報をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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