経営管理ビザで「バーチャルオフィス・コワーキング」がNGな理由:入管の視点から徹底解説
経営管理ビザ(Business Manager Visa)の取得を目指す起業家の方々にとって、最初の大きな壁となるのが「オフィスの確保」です。
コストを抑えるために「バーチャルオフィス」や「コワーキングスペース(フリーデスク)」を検討される方は非常に多いですが、入管(出入国在留管理庁)の実務において、これらは原則として認められません。
なぜ、現代の柔軟な働き方に逆行するかのように、物理的な個室が求められるのでしょうか?
この記事では、単なるルールの羅列ではなく、「入管審査官が何を懸念しているのか(入管の視点)」を深く掘り下げ、制度の趣旨から「なぜダメなのか」を徹底解説します。
起業当初は少しでも固定費を削りたいもの。
「PC一台あれば仕事ができる時代なのに、なぜ高い家賃を払って物理的なオフィスを借りなければならないのか?」
経営管理ビザを申請する多くの外国籍起業家が抱く疑問です。しかし、結論から言うと、バーチャルオフィスやオープンスペース型のコワーキングスペースでは、経営管理ビザの許可は下りません。
そこには、日本の入管法が守ろうとしている「ある重要なライン」が存在するからです。今回は、入管審査官の視点に立ち、なぜ物理的な「個室」が絶対条件なのか、その裏側にあるロジックを解説します。
1. 制度の趣旨:「事業の継続性」と「実体」の証明
まず、入管法が定める「経営・管理」の在留資格において、最も重要視されるキーワードがあります。
それは「事業の継続性」と「活動の実体」です。
入管審査官の心理:「この会社は本当に存在するのか?」
審査官は、提出された書類(事業計画書など)だけで、まだ実績のない会社の未来を審査しなければなりません。その際、彼らが最も恐れているのは以下のようなケースです。
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ペーパーカンパニー(実体のない会社)による不正取得
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ビザを取るためだけの偽装起業
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事業を行う場所がなく、不法就労の温床になること
バーチャルオフィスは「住所貸し」であり、そこにあなたのビジネスの実体はありません。コワーキングスペースのフリーデスクは、今日座れても明日は座れないかもしれません。
入管にとって、「専用の物理的なオフィスがある」ことは、「逃げも隠れもしない、腰を据えてビジネスを行う覚悟と実体がある」という最強の証明なのです。
2. 具体的要件:「独立性」という絶対的な壁
入管の審査基準において、オフィス要件の核心となるのが「独立性」という概念です。
これは、単に「部屋がある」ということ以上に厳しい基準が設けられています。
なぜコワーキングスペース(フリーデスク)はダメなのか?
コワーキングスペースがNGとされる最大の理由は、この「独立性」が欠如しているからです。
入管が見ている3つのポイント
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業務の独占的スペースがあるか?
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他の企業の人間が自由に出入りできる空間では、機密情報の管理や、独自の経済活動が行われているとは見なされません。
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明確な区画(壁やドア)があるか?
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パーティションで区切っただけ(天井が空いている)や、共有ラウンジでは認められません。「床から天井まで壁で仕切られ、ドアに鍵がかかること」が求められます。
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看板とポストの設置
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「ここにこの会社がある」と対外的に明示できる看板が必要です。
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審査官はこう考えます。
「顧客の個人情報や会社の資産(PCや現金)を、他人が行き交うカフェのような場所でどう管理するつもりなのか? それは経営者としての管理体制が整っていない証拠ではないか?」
つまり、場所の問題ではなく、「経営管理を行うための環境(セキュリティやプライバシー)」が確保されていないと判断されるのです。
3. バーチャルオフィスが論外である理由
バーチャルオフィスは、さらに審査のハードルが高く、実質「不可能」に近いです。理由はシンプルで、そこには「活動の場」が存在しないからです。
「どこで仕事をするのか?」という問い
バーチャルオフィスを契約している場合、実際の作業場所は「自宅」や「カフェ」になります。
- 自宅兼事務所の場合:住居用の賃貸契約では「商用利用」が禁止されていることがほとんどです。また、生活空間と事業空間が明確に(部屋単位で)分かれていない限り、認められません。
- カフェや不定の場所:これは「事業所」として認められません。入管法上の「事業所の確保」という要件を根本から満たしていません。
入管は、「いつでもそこにいけば、その会社があり、事業活動が行われている」という物理的な拠点を求めています。郵便物を受け取るだけの住所では、ビザを発行する根拠にならないのです。
4. 認められるケース:シェアオフィスでも「個室」ならOK?
ここで一つ、希望のある話をしましょう。
「普通の賃貸オフィス」でなければならないわけではありません。近年増えているレンタルオフィス(サービスオフィス)であっても、要件を満たせば許可は下ります。
審査を通すための「レンタルオフィス」選びの基準
入管が認めるレンタルオフィスの条件は以下の通りです。
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完全個室であること
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天井まで壁があり、施錠できるドアがある専用の部屋。
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専用のポストと表札が出せること
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建物の入り口や部屋のドアに、会社名を掲示できること。
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賃貸借契約書等の名義
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法人名義(または設立準備中の個人名義)で契約できること。
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使用目的
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契約書の使用目的が「事業用」「事務所」となっていること。
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つまり、「共有スペースしかないプラン」はNGですが、「鍵付きの個室プラン」であればOKとなる可能性があります。
5. 入管審査官を納得させるための「契約書」の罠
最後に、物件そのもの以外で多くの人が陥る罠について触れておきます。それは「契約書の中身」です。
たとえ立派な個室オフィスを借りても、賃貸借契約書の「使用目的」の欄に注目してください。
ここが「住居用」となっていたり、短期間(1ヶ月単位など)で解約可能な「一時使用」とみなされる契約内容だったりすると、不許可になるリスクが高まります。
入管の視点:
「契約期間が極端に短い、あるいは住居用の契約になっている。この外国人は、ビザが取れたらすぐに退去してしまうつもりではないか? 事業を長く続ける気がないのではないか?」
このように疑われないためにも、契約内容は「事業用」であり、ある程度の期間契約(通常は2年など)であることが望ましいのです。
まとめ:オフィスは「信頼」の証
経営管理ビザにおいて、オフィス要件が厳しい理由は、入管からの**「嫌がらせ」ではありません**。
日本という国でビジネスを行い、社会的な信用を得るための**「最初の基盤」**として、物理的かつ独占的なスペースを求めているのです。
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バーチャルオフィス ➝ 実体がないためNG
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コワーキング(フリーデスク) ➝ 独立性がないためNG
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個室レンタルオフィス ➝ 要件を満たせばOK
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一般賃貸オフィス ➝ もちろんOK
これから物件を探す際は、「安さ」だけでなく、「入管審査官が見た時に、ここで真剣にビジネスをすると信じてもらえるか?」という視点を持って選ぶようにしましょう。それが、ビザ取得への最短ルートになります。


