【シリーズ:事業計画書の極意 第2回】

公開日:2026年1月20日

3000万円を「投資」にするか、「浪費」にするか。その分岐点は、たった一つの書類にあります。

3000万円。

あなたが日本でのビジネスのために用意したこの資金は、決して安い金額ではありません。

しかし、残酷な事実をお伝えしなければなりません。入管の審査官にとって、あなたが3000万円を持っていることは、もはや「驚くべきこと」ではなく「当たり前の前提」に過ぎません。

彼らが審査するのは、あなたの口座残高ではありません。

「その3000万円を使って、具体的にどうやって日本経済を回すのか」という、あなたの頭の中にある設計図です。

多くの経営者が、資金の準備だけで満足し、肝心の「事業計画書」を軽視してしまいます。

はっきり申し上げます。曖昧な計画書を提出することは、「私はこの3000万円を失っても構いません」と宣言しているのと同じです。

巨額の資金を守り、日本での社会的地位を確立するために、事業計画書の「事業概要」と「動機」に何を記すべきか。その本質だけを語ります。

審査官の視点:「金持ち」ではなく「経営者」を探している

審査官は、通帳の数字だけではあなたを信用しません。

彼らが見ているのは、その資金が「適正に運用され、継続的に利益を生み、日本に税金を落とすか」という一点です。

「とりあえず会社を作ってみて、走りながら考えます」。

少額資本の時代ならいざ知らず、3000万円を動かすステージでその思考は通用しません。それは経営ではなく、ギャンブルだからです。

審査官が求めているのは、ギャンブラーではなく、勝算を持った「経営者」です。それを証明するのは、以下の2つの論理だけです。

1.事業概要:3000万円規模の「解像度」で描く

資本金に見合ったビジネスの規模感が記述されていなければ、審査官は不信感を抱きます。

3000万円を元手に商売をするのに、「ネットショップで雑貨を売ります」という一行で済ませてはいけません。

ビジネスモデルの「解像度」を極限まで上げてください。

  • 資金の使途を1円単位で語る:「運転資金」という言葉で濁さないでください。「銀座エリアでのテナント取得費に〇〇万円」「ECサイト構築とSEO対策に〇〇万円」「初期在庫〇〇点(3ヶ月分)の仕入れに〇〇万円」。3000万円がどこに消え、どうやって利益に変わるのか、そのサイクルを数字で証明してください。
  • 雇用の必然性:あなたは既に、日本人スタッフの雇用を前提としているはずです。ならば、そのスタッフに「何をさせるのか」が明確でなければなりません。「事務全般」では不十分です。「輸入通関手続きおよび国内バイヤーへの営業担当」など、その人件費が事業に不可欠なコストであることを示してください。

2.起業の動機:なぜ「日本」に3000万円を賭けるのか

ここが、許可・不許可を分かつ最大の分水嶺です。

母国であれば、その資金でもっと楽にビジネスができるかもしれない。それなのに、なぜわざわざ言葉も文化も違う日本を選ぶのか。

ここに強固な「ビジネス上の必然性」がなければ、審査官は「ビザ目的の投資ではないか?」と疑います。

  • 感情ではなく「市場」で語る:「日本が好き」は理由になりません。「私の扱うハイブランド商材は、アジアの中で日本の富裕層市場が最も購買単価が高く、3000万円の初期投資を2年で回収できる見込みが立っているため」と、市場原理に基づいて説明してください。
  • あなたの「過去」を担保にする:3000万円を運用する能力があることを、過去の経歴で証明してください。「母国で同規模の事業を〇年経営し、年商〇億円を達成した経験がある。そのノウハウを日本市場に移植する」というロジックは、現金以上の信用を担保します。

あなたの脳裏をよぎる「5つの反論」に答えます

あなたは今、3000万円というプレッシャーの中で、様々な迷いが生じているはずです。その迷いを断ち切るために、ここで決着をつけておきましょう。

①:「3000万円もあるのだから、細かいことは見逃してくれるだろう」

回答:

むしろ逆です。金額が大きいからこそ、入管は「マネーロンダリング」や「見せ金」を警戒し、重箱の隅をつつくように審査します。資金力にあぐらをかいた大雑把な計画書は、格好の餌食になります。

②:「ビジネスは生き物だ。計画通りになんていかない」

回答:

おっしゃる通りです。しかし、審査官が見たいのは「未来予知」ではなく「リスク管理能力」です。想定外の事態が起きた時、この資金量でどう耐え、どう軌道修正するか。そのシミュレーションの精度こそが評価されるのです。

③:「コンサルタントに丸投げして、綺麗な文章を書いてもらえばいい」

回答:

綺麗なだけの文章は、面接や実地調査で必ずボロが出ます。3000万円を背負うのはあなた自身です。専門家の力を借りるのは賢明ですが、魂となる「戦略」は、あなた自身の言葉で語れなければなりません。借り物の言葉で、この巨額の投資は守れません。

④:「もし不許可になったら、別のビザを考えればいい」

回答:

3000万円の会社設立準備をしてからの不許可は、甚大な経済的損失を意味します。オフィス契約、スタッフの雇用予約、仕入れの手付金。これらが全て無駄になります。「次がある」と思っている人ほど、最初の一回で躓きます。一発で決める覚悟が必要です。

⑤:「正直、ここまで厳密にやる必要があるのか?」

回答:

必要です。なぜなら、この事業計画書はビザのためだけでなく、その後の「銀行融資」や「大手企業との取引」のベースになるからです。最初から完成度の高い計画書を持つことは、日本でのビジネスを最速で軌道に乗せるための、唯一無二のショートカットなのです。

その「許可」がもたらす、日本社会での「信用」

この厳しい準備を乗り越えた先にある対価。 それは、単なる在留資格ではありません。日本という保守的なマーケットにおいて、あなたが「対等なビジネスパートナー」として認められるための入場券です。

通常、実績のない外国企業には、常に厳しい目が向けられます。しかし、3000万円という盤石な資本と、それを裏付ける論理的な計画があれば、話は変わります。

なかなか開設できない法人口座の審査が、スムーズに進むようになる。 外国人というだけで敬遠されがちなオフィスの賃貸契約が、事業の確実性を根拠に締結される。 そして、あなたの会社で働きたいという意欲ある人材に対し、胸を張って雇用契約を結べる環境が整う。

魔法のように特別扱いされるわけではありません。しかし、不当に足切りされることはなくなります。 「怪しい外国人」というレッテルを貼られることなく、一人の「経営者」として、日本のビジネス社会で堂々と勝負できる土俵が、そこに約束されるのです。

結論:書類一枚に、経営者としての「品格」を込めろ!!

3000万円を用意したあなたには、すでに経営者としての資格があります。

あとは、その覚悟を「論理」という言語に翻訳して、審査官に届けるだけです。

たかが書類、されど書類。

その紙切れ一枚が、あなたの3000万円を「死に金」にするか、未来を切り拓く「黄金の鍵」にするかを決定づけます。

もし、その論理構成に一ミリでも不安があるなら、迷わず専門家を頼ってください。

あなたの大きな挑戦を、完璧な勝利で飾るために。準備は、今この瞬間から始まっています。

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