会社設立の基礎知識:株式会社 vs 合同会社、あなたはどっちに合う?
「自分のビジネスを始めたい!」「会社を作りたい!」
そのように決意された皆様の熱意は、本当に素晴らしいものです。しかし、いざ会社設立(法人成り)を具体的に進めようとすると、多くの疑問や不安が出てくるかと思います。
特に、起業家が最初に直面する最大の選択。それが、「株式会社と合同会社、どちらを選ぶか?」という問題です。
ひと昔前までは「会社設立=株式会社」が当たり前でしたが、2006年の会社法施行により、新たに「合同会社」という形態が誕生しました。現在では、この合同会社を選ぶ起業家も急速に増えています。(有名な外資系企業、例えばアップルジャパンやグーグル日本法人も合同会社です)
「名前は聞いたことがあるけど、違いがよく分からない」
「費用が安いから合同会社でいいかな?」
「信用力を考えると、やっぱり株式会社?」
安易な選択は、将来の事業展開に影響を与える可能性もあります。
この記事では、この二つの会社形態の決定的な違いと、それぞれがどのような方に向いているかを、分かりやすく徹底的に比較・解説していきます。
そもそも「会社(法人)」にするメリットとは?
本題に入る前に、なぜ個人事業主ではなく「法人」を設立するのか、その共通メリット(特に重要な点)を再確認しておきましょう。
1. 社会的信用度の向上
法人は、法務局に登記された公的な存在です。個人事業主に比べて金融機関からの融資が受けやすくなったり、大企業との取引(BtoB)がスムーズに進んだりする傾向があります。
2. 税務上のメリット
売上(利益)が一定額を超えると、個人事業主の「所得税」(累進課税で最大45%)よりも、法人の「法人税」(実効税率は一定)の方が、納める税金が少なくなるケースが多くなります。また、経費として認められる範囲が広がったり、役員報酬(給与)として支払うことで節税(給与所得控除)に繋げられたりします。
3. 最大のメリット:「有限責任」
これが最も重要です。
株式会社も合同会社も「有限責任」です。これは、「もし会社が倒産して多額の負債を抱えても、出資者(株主や社員)は、自分が出資した金額の範囲内でしか責任を負わなくてよい」というルールです。
個人の場合、事業に失敗すると全財産を失うリスク(無限責任)がありますが、法人にすることで、個人の財産は守られます。(※ただし、経営者が会社の借入金の「個人保証」をしている場合は除きます)
徹底比較!株式会社 vs 合同会社
それでは、本題の比較に入ります。どちらも「有限責任」という点は共通していますが、それ以外の面で大きな違いがあります。
重要なポイントを、比較表で見てみましょう。
| 比較項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| ① 設立費用(法定費用) | 約20万円~ (定款認証5万円+登録免許税15万円~) | 約6万円~ (定款認証 不要+登録免許税6万円~) |
| ② 設立時の手間 | 定款の「公証役場での認証」が必要 | 定款の「公証役場での認証」が不要 |
| ③ 社会的信用度・知名度 | 非常に高い(日本のスタンダード) | 向上しているが、株式会社よりはやや低い |
| ④ 経営者(役員) | 取締役(任期あり:最長10年) | 業務執行社員(任期なし) |
| ⑤ 所有と経営 | 分離(所有者=株主、経営者=取締役) | 一致(所有者=出資者=社員) |
| ⑥ 利益の配分 | 出資比率(株式数)に応じて配分 | 定款で自由に決められる |
| ⑦ 資金調達の方法 | 株式の発行(増資)による調達が可能 | 株式の発行は不可(融資・借入が中心) |
| ⑧ 上場(IPO) | 可能 | 不可(株式会社への組織変更が必要) |
この比較表をもとに、特に重要な「費用」「信用度」「運営(ガバナンス)」の3点について、深く掘り下げて解説します。
1. 設立コストとスピード感の違い(費用)
まず、起業家にとって一番気になる「初期費用」です。
合同会社の圧勝です。
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株式会社
設立には、法務局に納める「登録免許税」が最低でも15万円かかります。さらに、その前段階として、会社の根本ルールである「定款(ていかん)」を作成し、それを「公証役場」で認証してもらう必要があります。この認証手数料が約5万円かかります。
(合計:約20万円)
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合同会社
登録免許税は、最低6万円です。そして、株式会社と違って**「公証役場での定款認証」が不要**です。
(合計:約6万円)
その差は約14万円。これは非常に大きな違いです。
また、GKは定款認証の手間がない分、手続きもスピーディーに進みます。
<行政書士の補足>
※上記費用は、ご自身で「紙の定款」を作成した場合です。私たち専門家が「電子定款」で申請を行うと、定款に貼る収入印紙代4万円が不要になります。
(株式会社なら20万→16万、合同会社なら6万→6万(合同会社は元々印紙不要))
※実際には、これに加えて専門家への報酬や、会社の印鑑作成費用などがかかります。
2. 社会的信用度と「見え方」の違い(信用)
次に、ビジネスを行う上での「信用力」です。
これは、現状では株式会社に軍配が上がります。
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株式会社
日本では、歴史的にも「会社=株式会社」というイメージが定着しています。特に、歴史の長い企業や金融機関、BtoB(法人向け)のビジネスを行う場合、「株式会社」という名称の持つ信頼感、安心感は絶大です。
また、将来的に優秀な人材を採用したい場合も、株式会社の方が有利に働く傾向があります。
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合同会社
冒頭で述べた通り、大手外資系企業がGK形態をとっていることもあり、その認知度や信用度は年々向上しています。
しかし、特にご年配の経営者や地方の企業などでは、まだ馴染みが薄く「株式会社より格下」「個人事業主の延長」といったイメージを持たれてしまう可能性がゼロではありません。
BtoC(一般消費者向け)のビジネス(飲食店、美容室、Webサービスなど)では、お客様が会社形態を意識することは少ないため、合同会社でも全く問題ありません。しかし、法人取引がメインの場合や、許認可(建設業、不動産業など)が必要な場合は、株式会社の信用力が有利に働く場面が多いでしょう。
3. 経営の自由度とルールの違い(運営)
これは、会社の「将来設計」に関わる重要な違いです。
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株式会社:「所有と経営の分離」
株式会社の基本的な考え方は、「お金を出す人(株主)」と「経営をする人(取締役)」を分けることです。(※中小企業では株主=取締役がほとんどですが、ルール上の建前です)
- 意思決定: 重要なことは「株主総会」で決定します。
- 利益配分: 「持っている株式の数」に応じて、公平に配分されます。
- 役員の任期: 取締役には「任期(最長10年)」があります。任期が満了すれば、たとえ同じ人が続ける場合でも、法務局への「役員変更登記」(登記費用がかかります)が義務付けられています。
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合同会社 (GK):「所有と経営の一致」
合同会社は、「お金を出す人(出資者)」=「経営をする人」です。出資者のことを法律上「社員」と呼びます。(※従業員のことではありません)
- 意思決定: 原則として「社員全員の同意」で物事を決めます。非常にスピーディーな経営が可能です。
- 利益配分: 定款に定めさえすれば、出資比率に関係なく、自由に利益を配分できます。例えば、「Aさんは100万円出資、Bさんは50万円出資だけど、技術力(貢献度)が高いBさんにもAさんと同じ配分にする」といった柔軟な設計が可能です。
- 役員の任期: 役員(業務執行社員)に「任期」という概念がありません。KKのように数年ごとの「変更登記」が不要で、運営コストと手間を削減できます。
この「経営の自由度の高さ」こそが、GKの最大の魅力です。
結論:あなたはどちらのタイプ?
これまで解説した違いを踏まえ、あなたがどちらの形態を選ぶべきか、具体的なシナリオをご提案します。
株式会社がオススメな方
- 将来的に、外部からの資金調達(出資)や上場(IPO)を目指している方(GKは株式発行による資金調達ができず、上場もできません)
- BtoB(法人向け)ビジネスが中心で、会社の「信用力」「格」を最重要視する方
- 金融機関からの大型融資や、許認可をスムーズに進めたい方
- 「社長」ではなく「代表取締役」という肩書きにこだわりたい方
- 事業を大きくスケールさせていくビジョンが明確な方
→「信用力」と「将来の拡張性」を重視するなら、株式会社を選びましょう。
合同会社がオススメな方
- とにかく設立費用と運営コスト(ランニングコスト)を安く抑えたい方(初期費用を事業の運転資金に回せます)
- BtoC(一般消費者向け)のビジネス(店舗経営、Webサービス、コンサル等)が中心の方
- 外部から出資を募る予定がなく、自己資金や融資(借入)で経営する方
- 家族経営や、気の合う仲間数名でスピーディーに経営したい方
- 利益配分を、出資額ではなく「貢献度」で柔軟に決めたい方
→「コスト」と「経営の自由度・スピード」を重視するなら、GKを選びましょう。
迷ったらどうする?「合同会社から株式会社への組織変更」
「今はコストを抑えたいから合同会社で始めたい。でも、将来ビジネスが軌道に乗ったら、信用力のある株式会社になりたい…」
ご安心ください。
合同会社から株式会社へ、途中で変更(組織変更)することが可能です。
ただし、組織変更には「株主総会ならぬ社員総会の開催」「債権者保護手続き(官報公告など)」「登記申請」といった複雑な法務手続きが必要となり、当然ながら費用(登録免許税6万円~+専門家報酬)と時間もかかります。
設立時のコストを節約したものの、数年後に組織変更で結局コストがかかってしまうケースもあります。
だからこそ、「少なくとも今後3~5年の事業計画」を見据えて、最初の会社形態を選ぶことが非常に重要なのです。
まとめ:最初の選択は「専門家」にご相談ください
株式会社と合同会社、それぞれのメリット・デメリットが見えてきたかと思います。
- 株式会社:コストは高いが、「信用」と「拡張性(資金調達)」に優れる王道。
- 合同会社:コストは安いが、「自由度」と「スピード」に優れる実利派。
どちらが優れている、という話ではありません。あなたの事業モデル、将来のビジョン、そして「何を最優先するか」によって、正解は変わります。
会社設立は、皆様の大切な夢の第一歩です。
その第一歩を、法務の面でしっかりとサポートし、スムーズな船出をお手伝いするのが私たちの役目です。
定款の作成・認証から、法務局への登記申請まで、会社設立に関する手続きは非常に複雑です。
まずは一度、お気軽にご相談ください。


