外国人が日本で会社を設立する全手順を7ステップで完全ガイド
日本は、その安定した経済、高度な技術力、そして魅力的な市場で、世界中の起業家にとって魅力的なビジネスの場であり続けています。しかし、外国人(外国籍の方)が日本で会社を設立しようとする時、言語の壁はもちろん、日本の法律、独特の商習慣、そして在留資格(ビザ)の問題など、多くのハードルに直面するのも事実です。
「何から始めればいいのかわからない」
「必要な書類や手続きが複雑すぎる」
「ビザはいつ申請すればいいの?」
このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そのような方々のために、外国人が日本で会社(特に「株式会社」)を設立するプロセスを、体系的に7つのステップに分けて、ゼロから徹底的に解説します。各ステップで外国人が特に注意すべき点も盛り込みました。
この記事を最後まで読めば、会社設立までの全体像と具体的な流れが明確になり、日本でのビジネススタートに向けた確実な一歩を踏み出せるはずです。
【ステップ1】会社の基本設計図を描く(基本事項の決定)
会社設立は、家を建てる前の設計図作りから始まります。まずは、あなたの会社の「骨格」となる以下の基本事項を決定しましょう。これらは後に作成する「定款(ていかん)」の土台となります。
- ① 商号(会社名)あなたの会社の顔となります。日本では、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、アラビア数字、一部の記号(「&」「-」「.」など)が使用可能です。ただし、「同一の住所に、同一の商号」は登記できません。また、有名企業と紛らわしい名前は避けるのが賢明です。法務局のオンラインサービスで、類似商号の調査が可能です。
- ② 本店所在地(会社の住所)会社の「公式な住所」です。自宅、賃貸オフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィスなど、選択肢は様々です。
【注意点①】
後述する「経営・管理」ビザの取得を目指す場合、バーチャルオフィスや自宅兼事務所(住居スペースと明確に区分されていない場合)は、事業の「実体がない」と判断され、ビザが不許可になるリスクが非常に高くなります。ビザ取得のためには、独立した物理的なオフィススペースを確保することが強く推奨されます。
- ③ 事業目的(何で稼ぐか)その会社が「何をする会社なのか」を具体的に示します。これは非常に重要で、ここに記載されていない事業は原則として行えません。
- 適法性・明確性: 誰が読んでも理解でき、かつ適法な内容である必要があります。
- 許認可: 飲食業、不動産業、古物商、人材派遣業など、特定の事業を行うには国や都道府県の「許認可」が必要です。事業目的に適切な文言が記載されていないと、許認可が下りません。
- 将来性: すぐに始めなくても、将来的に行う可能性のある事業も記載しておきましょう。
- ④ 資本金(会社の元手)法律上は1円からでも設立可能ですが、現実的には1円での設立は推奨されません。
【注意点②】
「経営・管理」ビザを取得する要件の一つに、「3000万円以上の出資(資本金)」という項目があります。ビザ取得を考えるなら、資本金は3000万円以上を用意するのが必須です。また、資本金は会社の信用度や、設立当初の運転資金にも直結します。
詳しくはこちらのBLOGをご覧ください。
- ⑤ 発起人(出資者)会社設立時に資本金を出す人(=株主になる人)です。外国人本人(個人)でも、外国の法人でも発起人になれます。
- ⑥ 役員(経営する人)会社の経営を行う人(取締役など)です。最低1名(取締役1名)から設立可能です。発起人がそのまま役員になることが一般的です。
【ステップ2】最重要関門:「経営・管理」ビザの要件を確認する
日本に居住してビジネス(経営活動)を行うためには、適切な在留資格(ビザ)が必要です。その代表的なものが「経営・管理」ビザです。
すでに「永住者」や「日本人の配偶者等」の在留資格を持っている方はこのステップは不要ですが、そうでない場合は、会社設立の準備と「同時並行」で、ビザの要件をクリアできるかを徹底的に確認する必要があります。
主な要件:
- ①事業所の確保: ステップ1で触れた通り、日本国内に独立した事業所(オフィス、店舗など)が確保されていること。
- ②投資額(資本金): 3000万円以上の資本金が払い込まれていること。
- ③事業の安定性・継続性: 事業計画書を作成し、「このビジネスは日本で継続的に利益を上げていける」ことを入国管理局(出入国在留管理庁)に説得力をもって示す必要があります。
ビザの申請は、原則として「会社設立が完了した後」に行いますが、設立準備段階でこれらの要件(特に3000万円の資本金とオフィスの確保)を満たせる見込みがなければ、会社を作ってもビザが取れない、という最悪の事態になりかねません。
詳しくはこちらのBLOGをご覧ください。
【ステップ3】日本国内の協力者を確保する
外国人が日本で会社を設立する際、日本に住所を持つ協力者(日本人または日本在住の外国人)がいるかどうかで、手続きの難易度が劇的に変わります。
なぜ協力者が必要か?
- ①資本金の払込口座: 会社設立時、資本金は「発起人代表」の「日本の銀行の個人口座」に振り込む必要があります。この時点ではまだ会社名義の口座は作れません。発起人全員が海外在住で日本の銀行口座を持っていない場合、資本金の払い込み手続きが非常に困難になります。
- ②オフィスの賃貸契約: 日本でオフィスを借りる際、家主(オーナー)や不動産会社から、日本在住の連帯保証人を求められたり、日本国内の銀行口座からの家賃支払いを求められたりすることが一般的です。
- ③代表取締役: 役員(代表取締役)のうち、少なくとも1名が日本在住者(日本人または在留資格を持つ外国人)でないと、法人口座の開設を銀行が拒否するケースが非常に増えています。
もし日本に協力者がいない場合は、会社設立やビザ申請をサポートしてくれる専門家(司法書士、行政書士)に相談し、設立手続きを代行してもらう(例えば、専門家が一時的に口座を管理する)などの方法を検討する必要があります。
【ステップ4】会社の憲法「定款(ていかん)」の作成と認証
ステップ1で決めた基本事項をもとに、会社の根本規則である「定款」を作成します。
- ①定款の作成: 商号、事業目的、本店所在地、資本金、株式のルール、役員の構成などを法的な形式で文書化します。司法書士に作成を依頼するのが一般的です。
- ②定款の認証: 作成した定款は、公証役場(こうしょうやくば)に持ち込み、「認証」という手続きを受ける必要があります。これは、「その定款が正当な手続きで作成された」ことを公証人が証明するものです。
【注意点③】
定款認証の際、発起人(出資者)全員の「本人確認書類」が必要です。
- 日本在住者の場合: 印鑑証明書
- 海外在住の外国人の場合: 日本の印鑑証明書がないため、「サイン証明書(Signature Certificate)」が必要になります。これは、本国の公証役場(Notary Public)や、日本にある本国の大使館・領事館で取得します。
ちなみに、紙の定款ではなく「電子定款」で認証を受けると、印紙代4万円が不要になります。司法書士に依頼する場合は、通常電子定款で対応してくれます。
定款に関してはこちらのBLOGもご覧ください。
【ステップ5】資本金の払い込み(出資金の入金)
定款認証が無事に完了したら、次は資本金を実際に払い込みます。
- ①払込先: ステップ3で触れた通り、発起人代表者(日本在住の協力者など)の 個人名義の銀行口座 です。
- ②方法: 各発起人(出資者)が、自分の出資額をその口座に振り込みます。
- ③証拠の保存: 払い込みが完了したら、その銀行通帳の以下のページをコピーします。
- 通帳の表紙
- 表紙をめくった、銀行名・支店名・口座番号・名義人が記載されたページ
- 資本金の振込が記帳されたページ(全出資者の入金が確認できること)
これらのコピーは、次のステップ「登記申請」で非常に重要な証拠書類となります。
【ステップ6】法務局へ「登記申請」【会社誕生】
いよいよ、会社を法的に誕生させるための最終手続き「登記申請」です。
- ①申請日 = 会社設立日: 登記申請書類を法務局に提出した日が、あなたの会社の「設立日(誕生日)」となります。
- ②申請先: ステップ1で決めた「本店所在地」を管轄する法務局。
- ③主な必要書類:
- 登記申請書
- 定款(公証人の認証を受けたもの)
- 資本金の払込証明書(ステップ5で準備した通帳コピーなど)
- 役員(取締役など)の就任承諾書
- 役員全員の本人確認書類(日本在住者は印鑑証明書、海外在住の外国人はサイン証明書)
- 登録免許税(資本金の0.7%、最低15万円)の納付書
書類に不備がなければ、申請から約1週間~2週間で登記が完了し、「登記事項証明書(登記簿謄本)」が取得できるようになります。これで、法的にあなたの会社が日本に誕生したことになります。
【ステップ7】設立後の手続きと「経営・管理」ビザ申請
登記が完了しても、すぐにビジネスを開始できるわけではありません。以下の重要な手続きが残っています。
- ① 税務・社会保険関連の届出会社を設立したら、様々な役所に「会社ができました」という届出が必要です。
- 税務署: 法人設立届出書、青色申告の承認申請書(節税のために重要)など。
- 都道府県・市町村: 法人設立届出書(地方税のため)。
- 年金事務所: 健康保険・厚生年金保険の加入手続き(社長1人でも原則加入)。
- 労働基準監督署、ハローワーク
- ② 法人口座の開設会社名義の銀行口座(法人口座)を開設します。登記事項証明書やオフィスの賃貸契約書などが必要です。近年、審査が非常に厳格化しており、特に代表者が外国籍の場合、開設に時間がかかることがあります。
- ③ 「経営・管理」ビザの申請(本番)会社が法的に設立され、オフィスも契約し、登記事項証明書が手に入ったら、いよいよ出入国在留管理庁へ「経営・管理」ビザの申請を行います(日本にいる場合は「変更申請」、海外にいる場合は「認定証明書交付申請」)。ステップ2で確認した要件(3000万円の資本金、事業所、事業計画書等)を証明する膨大な書類を提出します。
🏁 まとめ:成功の鍵は「準備」と「専門家」
外国人が日本で会社を設立する7つのステップをご紹介しました。
- 基本事項の決定
- ビザ要件の確認
- 日本国内の協力者確保
- 定款の作成・認証(サイン証明書の準備)
- 資本金の払い込み(日本の口座へ)
- 登記申請(会社設立日)
- 設立後手続きとビザ申請
ご覧の通り、日本人が設立する以上に多くのハードル(特に「ビザ」「サイン証明書」「日本の銀行口座」)が存在します。
これらの複雑な手続きを一人で完璧にこなすのは至難の業です。日本でのビジネスをスムーズに軌道に乗せるためにも、会社設立は司法書士に、ビザ申請は行政書士に、税務は税理士に、それぞれの専門家の力を借りることを強くお勧めします。
綿密な準備と信頼できるパートナーが、あなたの日本での成功を後押ししてくれるはずです。あなたの挑戦を心から応援しています!


