【経営管理ビザ】10.16改正で新設された「日本語能力N2」要件。その具体的なレベル感と実務上の証明方法

公開日:2025年12月11日

2025年10月16日施行の改正により、経営管理ビザ(経営・管理在留資格)の許可要件は、過去に類を見ないほど厳格化されました。

新基準の骨子は、以下の2点に集約されます。

  1. 資本金要件: 3,000万円以上の出資

  2. 雇用要件: 常勤職員(日本人、永住者、定住者等)の雇用が必須

これらに加え、実務上、非常に重要となるのが第3の要件である「日本語能力要件」です。

法令上、「申請人又は常勤職員のいずれかが、相当程度の日本語能力(N2以上)を有すること」と規定されました。

資本金3,000万円という巨額の投資を行い、かつ日本人や永住者等を雇用して組織を構築する以上、この「N2要件」を正確に理解し、適切な証明資料を準備することは、許可を得るための最低限のルールとなります。

本記事では、改正法が求める「日本語能力N2」の具体的なレベル感と、実務における証明方法について、行政書士の視点から解説します。


「相当程度の日本語能力(N2)」の具体的レベル感

入管庁のガイドライン等において、求められる日本語能力の目安は「日本語能力試験(JLPT)のN2レベル相当」とされています。

では、この「N2」とは、ビジネスの現場において具体的にどの程度の能力を指すのでしょうか。

① JLPT(日本語能力試験)における定義

公的な定義におけるN2は、「日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルとされています。

  • 読む: 新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論などを読んで、内容を理解できる。

  • 聞く: 自然に近いスピードのまとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を把握できる。

②経営管理実務における「N2」の基準

私たち行政書士が実務で接する中で、経営管理ビザの審査において求められているのは、単なる語学力ではなく、「日本の法令・商慣習の中で、代理人として対外折衝を完遂できる能力」です。

具体的には、以下のような場面に対応できる水準が「N2相当」と解釈されます。

・ 金融機関との折衝(口座開設・融資)

3,000万円の資本金があっても、法人口座が開設できなければ事業は行えません。昨今の銀行審査は厳格であり、マネーロンダリング対策の観点から、事業内容や資金使途について詳細な説明を求められます。

ここでは、定型的な挨拶だけでなく、「なぜこの事業が必要なのか」「収益構造はどうなっているのか」を論理的に説明し、銀行担当者の質疑に応答できる能力が必須となります。

・行政手続きとコンプライアンス

税務署、社会保険事務所、労働基準監督署など、事業運営には多くの行政手続きが伴います。

「届出書の意味が分からない」「係官の説明が聞き取れない」という状態では、法令遵守(コンプライアンス)体制が築けないと判断されます。専門用語が含まれる行政の指導内容を大枠で理解し、不明点を質問できるレベルが求められます。

・契約およびリスク管理

事務所の賃貸借契約や、取引先との業務委託契約において、契約書の内容を把握する能力です。

「解約予告期間」「違約金条項」「損害賠償の範囲」など、経営リスクに直結する条項を読み取り、自社に不利な点がないかを確認できる読解力が、経営者またはその代行者(常勤職員)には不可欠です。


証明方法:有効な4つのルート

この日本語能力要件は、口頭での申告ではなく、客観的な資料によって立証する必要があります。

申請人(経営者)本人が証明する場合、あるいは雇用する常勤職員(永住者等の外国籍の方)が証明する場合、以下のいずれかの資料が必要です。

① 日本語能力試験(JLPT)N2以上の合格

最も標準的かつ認知度の高い証明方法です。

  • 概要: N1またはN2の「認定結果及び成績に関する証明書」を提出します。

  • 留意点: 試験は年2回(7月・12月)のみ実施されます。申請スケジュールに合わせて計画的に受験する必要があります。

② BJTビジネス日本語能力テスト 400点以上

ビジネス場面でのコミュニケーション能力を測定するテストです。N2相当の基準として「400点以上」が認められています。

  • 概要: テストセンターでのCBT方式(コンピュータ受験)を採用しており、随時受験が可能です。結果も即日判明します。

  • 実務上の推奨: JLPTの開催時期が合わない場合や、急ぎで申請を行う必要がある場合、最も有効な選択肢となります。

③ 日本の大学・大学院の学位取得

日本の大学(短期大学を含む)または大学院を卒業し、学位(学士・修士・博士)を取得している場合、N2相当以上の能力があるとみなされます。

  • 証明資料: 卒業証明書または学位記の写し。

  • 専門学校の扱い: 専門学校卒業(専門士)については、一律に要件を満たすとはみなされず、「高度専門士」の称号が付与されている場合や、日本語教育機関を経て入学している場合など、個別の経歴によって判断が分かれます。

④ 日本の中学校・高等学校の卒業

日本国内の義務教育(中学校)および高等学校を卒業している場合も、日本語能力の証明として認められます。

  • 対象: 日本で教育を受けた特別永住者の方や、定住者の方などが該当します。


新基準(3000万円・雇用必須)下における実務対応

今回の改正では、日本人または身分系在留資格(永住者等)を持つ常勤職員の雇用が義務付けられています。

この前提の中で、日本語能力要件をどうクリアするかは、採用計画と密接に関わります。

① 常勤職員が「永住者・定住者等」の場合

雇用するスタッフが外国籍(永住者、日本人の配偶者等、定住者など)である場合、そのスタッフが日本語要件を満たしていることを証明しなければなりません。

「日本に長く住んでいるから大丈夫だろう」という推測は通用せず、前述したJLPTの合格証や学歴証明書の提出が必須となります。

採用面接の段階で、在留カードの確認と同時に、**「日本語能力を証明する公的書類の有無」**を確認することが、採用ミスマッチを防ぐ重要な手続きとなります。

②経営者本人が取得する意義

法令上はスタッフがいれば要件を満たせますが、経営者ご自身がN2レベルまたはBJT400点を取得することには、事業上の大きなメリットがあります。

それは「経営権の独立性」です。

すべての対外折衝をスタッフに依存する体制は、そのスタッフの退職が即座に「事業停止リスク」に直結します。3,000万円という大規模な投資を守るためには、経営者自身が最低限の日本語能力(N2)を有し、自律的に判断できる体制を整えることが、ビザの更新や事業の永続性において最も確実なリスクヘッジとなります。


まとめ

2025年10月16日の改正に伴う日本語能力要件は、単なる形式的なルールではなく、日本で安定して事業を営むための「基礎体力」を問うものです。

  • 基準: JLPT N2相当(BJT 400点以上)。

  • レベル感: 銀行交渉や行政手続き、契約実務に対応できる水準。

  • 証明: テスト結果または日本の学歴証明が必須。

特に、雇用する常勤職員として外国籍の永住者等を予定している場合は、その方の日本語能力証明がビザ申請の必須書類となる点にご注意ください。

当事務所では、新基準(資本金3,000万円・雇用必須)に対応した事業計画書の作成、および要件適合性の診断を行っております。確実な手続きのために、ぜひ専門家をご活用ください。


【免責事項】

本記事の内容は、2025年12月時点の法令および実務運用に基づき作成しております。実際の審査は個別の事情により判断が異なりますので、詳細は専門家へご相談ください。

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