前回のブログでは、「日本国内に協力者がいる場合」の経営管理ビザ取得ルートについて解説しました。信頼できるパートナーが日本にいれば、資本金の受け皿口座を借りたり、先に事務所を契約してもらったりと、準備は非常にスムーズに進みます。
しかし、「日本には頼れる知人もパートナーもいない。それでも自分の力だけで日本で起業したい」という方はどうすればよいのでしょうか?
2025年10月16日の改正施行により、資本金要件が3,000万円へと引き上げられ、常勤職員の雇用も義務化された今、単身での日本進出はかつてないほど戦略的な動きが求められます。そこで救世主となるのが「4ヶ月」の経営管理ビザです。
今回は、協力者がいない起業家が、この短期ビザをどのように使って3,000万円の壁を突破すべきか、徹底解説します。

協力者がいない人の最大の壁:「鶏と卵」問題
日本で「経営・管理」ビザ(通常1年〜)を取得するには、本来「事業が開始できる状態」である必要があります。しかし、協力者がいない外国人が一人で準備しようとすると、以下の矛盾にぶつかります。
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資本金の壁: 3,000万円を送金したいが、日本の居住者(在留カード保持者)でないと個人の銀行口座が作れない。
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事務所の壁: 事務所を借りたいが、在留資格がないと不動産会社に相手にされにくい。
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雇用の壁: 改正で必須となった「常勤職員1名」を採用したいが、法人が未設立でビザもない状態では募集が難しい。
この「ビザがないと準備できないが、準備ができていないとビザが出ない」という問題を解決するのが、4ヶ月の経営管理ビザです。
4ヶ月の経営管理ビザ:単身起業家のための「上陸許可証」
「4ヶ月」という在留期間は、2015年の法改正で「会社設立準備」として明確に定義されましたが、その概念自体はそれ以前から実務上存在していました。現在の「3,000万円・雇用必須」の新基準下では、この期間は「自分の足で立ち、自分の口座を作り、自分のスタッフを雇うためのセットアップ期間」としての重要性が極めて高まっています。
4ヶ月ビザの最大の武器は「在留カード」
4ヶ月のビザが許可されると、空港で「在留カード」が発行されます。
これにより、協力者に頼ることなく、以下の手続きを「外国人起業家本人」の名義で行えるようになります。
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住民登録: 日本の住所を確定させ、印鑑証明書を取得。
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本人名義の口座開設: 日本の銀行で口座を作り、海外から3,000万円を直接送金。
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法人登記: 協力者の口座を経由せず、自分の口座の残高証明で会社を設立。
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スタッフ採用: 経営者として直接面接し、社会保険の手続きを行う。
2025年10月16日改正:3,000万円時代の新ルール
ここで、改正後の厳しい要件を再確認しておきましょう。4ヶ月ビザで入国した後の「更新(1年への切り替え)」時には、以下のすべてを満たしている必要があります。
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3,000万円以上の投資: 資本金として実際に払込み、登記されていること。
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常勤職員1名の雇用: 日本人、永住者、定住者などを1名以上、社会保険に加入させて雇用すること。
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日本語能力(N2/B2レベル): 経営者本人、または常勤職員が証明書を提出すること。
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専門家によるお墨付き: 中小企業診断士、税理士、公認会計士が「この事業は3,000万円の投資に見合い、継続可能である」と評価した事業計画書。
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独立した事務所: 自宅兼事務所は原則不可。実体のあるオフィスの確保。
協力者がいない場合、これらすべてを入国後のわずか4ヶ月間で完遂しなければなりません。
協力者なし・単身起業の成功ロードマップ
協力者がいないからこそ、来日前からの「緻密な計画」が合否を分けます。
ステップ1:海外からのCOE(認定証明書)申請
「まだ日本に会社はないが、3,000万円を用意しており、4ヶ月以内に出資・採用・設立を行う」という計画で申請します。
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重要: 3,000万円の「資金形成過程(SoF)」を完璧に証明する必要があります。協力者がいない場合、入管は「この資金は本当に本人のものか?」をより厳しくチェックします。
ステップ2:来日と「最速」のインフラ整備
入国後1週間以内に住民登録を済ませ、銀行へ直行します。3,000万円という多額の送金を受けるため、銀行のコンプライアンス審査には時間がかかります。1日も無駄にできません。
ステップ3:3,000万円の送金と増資登記
自分の口座に資金が到着したら、即座に会社設立(または増資)の登記を行います。この時点で「事業規模3,000万円」の要件がクリアされます。
ステップ4:採用活動と日本語要件の充足
本人がN2を持っていない場合は、この期間内にN2以上のスキルを持つ日本人スタッフを必ず1名以上雇用し、社会保険に加入させます。
ステップ5:更新申請
4ヶ月の期限が切れる前に、すべての証憑(登記簿、社保加入届、事務所写真等)を揃えて更新申請を行います。
協力者がいない人がハマる「3つの落とし穴」
行政書士として、単身で挑戦する方に特に注意していただきたいポイントがあります。
① 事務所選びの難航
協力者がいれば代理で内見や仮契約が可能ですが、一人の場合、入国してから探し始めると「4ヶ月」という時間はあっという間に溶けてしまいます。来日前にオンライン内見などで物件を絞り込んでおく必要があります。
② 銀行口座開設の拒絶
最近、日本の銀行はマネーロンダリング対策として新規口座開設、特に多額の海外送金が絡むものに非常に慎重です。在留期間が4ヶ月という「短期間」であることを理由に断られるケースもあるため、どの銀行であれば対応可能か、事前に行政書士等の専門家と相談しておくべきです。
③ 専門家評価のハードル
改正で義務化された「中小企業診断士等による事業計画の確認」。協力者がいない場合、事業のローカルな妥当性(その場所でその商売が成り立つか)の判断が難しくなります。日本の市場環境に精通した専門家のサポートが不可欠です。
まとめ:一人でチャレンジする起業家こそ、制度を味方に
2025年10月の改正により、経営管理ビザのハードルは確かに高くなりました。しかし、4ヶ月ビザを活用すれば、協力者がいなくても「自分の名義で、自分の責任で」日本でのビジネスを始める道は開かれています。
3,000万円という大きな投資を成功させるためには、入国後の「作業」をこなすだけでなく、入国前の「戦略」がすべてです。
当事務所の単身起業サポート
協力者がいない海外のお客様のために、弊所では来日前の物件リサーチのアドバイスから、銀行口座開設のサポート、そして改正で必須となった「専門家による事業計画評価」まで、トータルでバックアップいたします。
次の一歩として
協力者がいなくても、3,000万円の資金と情熱があれば道は拓けます。あなたのプランが4ヶ月ビザの要件に合致するか、まずは個別相談で確認してみませんか?


