【不許可事例研究③】事業計画の実現性不足:「売上根拠が曖昧」と判断されたケース

公開日:2026年4月1日

「事業計画書は自分なりにしっかり作ったのに、まさか不許可になるとは思わなかった……」。経営管理ビザの申請において、こうした声を耳にすることは決して珍しくありません。

不許可事例研究シリーズの第3回となる今回は、事業計画書に記載した売上予測の「根拠」が不十分と判断され、不許可となったケースを取り上げます。経営管理ビザの取得においては、出入国管理及び難民認定法に基づく事業活動の該当性に加え、関連基準等による事業規模の要件を満たす必要があります。さらに実務上、専門家による事業計画の確認が求められるケースもあり、売上根拠の説得力はこれまで以上に重要です。

この記事を通じて、どのような売上根拠が「曖昧」と判断されるのか、そして審査を通過するためにはどのような準備が必要なのかを、行政書士の実務経験に基づいて詳しく解説いたします。

経営管理ビザの事業計画書で審査官が見る「売上根拠」とは

入管が求める「実現可能性」の基準

経営管理ビザの審査において、出入国在留管理局の審査官は事業計画書を「読み物」としてではなく、「事業が本当に成り立つのか」を判断するための資料として精査しています。

ここで最も重視されるのが、売上予測の「実現可能性」です。具体的には、売上の数字そのものよりも、「なぜその売上が見込めるのか」という論理的な根拠が問われます。たとえば、「月商500万円を見込む」と記載するだけでは不十分であり、その500万円がどのような顧客層から、どのような商品・サービスを通じて、どのような販売チャネルで獲得できるのかを、客観的なデータとともに示す必要があります。

審査官は数多くの事業計画書を見てきた実務の専門家です。客観的な根拠のない楽観的な数字は、説得力を欠くと判断されるリスクが高いとお考えください。

専門家確認制度と事業計画書の関係

近年の実務上の運用では、事業計画書について中小企業診断士や公認会計士などの専門家による確認が求められるケースがあります。これは、申請者が作成した事業計画の妥当性を第三者の視点から客観的に評価する趣旨のものです。

専門家は、売上予測の根拠が市場の実態と整合しているか、コスト構造に無理がないか、キャッシュフローの見通しに合理性があるかなどを確認します。つまり、売上根拠の曖昧さは、申請者自身の問題にとどまらず、専門家の確認を通じても指摘される可能性が高いということです。逆に言えば、専門家の確認を受ける前の段階で、しっかりとした売上根拠を準備しておくことが、スムーズな申請手続きの鍵となります。

【不許可事例】「月商300万円」の根拠を示せなかったケース

事例の概要と申請内容

今回取り上げるのは、日本国内で貿易業を営むことを計画し、経営管理ビザを申請した方のケースです。

この申請者は、母国と日本の間で食品の輸入販売を行う事業計画を立て、事業計画書には「開業後6か月で月商300万円を達成する」と記載していました。事業規模に関する基本的な要件はクリアしており、事業所の賃貸契約も適切に締結されていました。しかし、事業計画書の売上予測に関して、審査過程で大きな疑問を投げかけられることになったのです。

不許可の決定的理由

審査の結果、不許可となった決定的な理由は、月商300万円という数字の根拠が極めて薄弱だったことにあります。具体的には、以下の点が問題視されました。

  • 第一に、想定する販売先(取引先)との間に契約書や覚書はおろか、具体的な商談の記録さえ存在しませんでした。
  • 第二に、「日本国内の〇〇市場は△△億円規模であり、そのうち1%を獲得する」という記述がありましたが、なぜ1%を獲得できるのかの根拠がまったく示されていませんでした。
  • 第三に、仕入先との取引条件や物流コストの見積もりが曖昧で、利益率の計算にも合理性が認められませんでした。

つまり、この申請者の事業計画書は、「希望的な数字の羅列」にすぎず、審査官に「この事業は本当に継続して実現できる」と納得させるだけの説得力を欠いていたのです。

売上根拠が「曖昧」と判断される典型的な3つのパターン

上記の不許可事例から学べる教訓を一般化すると、売上根拠が「曖昧」と判断されるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。行政書士としての経験から、特に注意すべき3つのパターンをご紹介します。

パターン①:市場調査なしの楽観的な売上予測

最も多いパターンが、客観的な市場調査を行わないまま、「これくらいは売れるだろう」という感覚的な数字を事業計画書に記載してしまうケースです。

「日本は〇〇の需要が高いから成功するはず」といった一般論だけでは、十分な理解を得ることは困難です。業界団体の統計データ、政府の市場調査報告書、競合企業の公開情報など、客観的な根拠資料を用いて売上予測を裏づけることが不可欠です。

パターン②:顧客獲得の具体的手段が不明

「SNSマーケティングで集客する」「口コミで広がる」といった抽象的な記述だけでは、顧客獲得の手段として具体性に欠けると判断されがちです。

審査側が知りたいのは、「では、具体的にいつ、どのプラットフォームで、どのようなコンテンツを、いくらの予算で展開し、その結果どれだけの見込み客を獲得できるのか」という点です。マーケティング計画は、予算の裏づけとともに、時系列で具体的に記述する必要があります。

パターン③:業界平均との整合性がない

たとえば、同業種・同規模の企業の平均売上高が月商200万円程度であるにもかかわらず、開業初年度から月商500万円を見込むような計画は、「なぜ業界平均を大幅に上回れるのか」という強力な根拠がなければ、非現実的と判断されるおそれがあります。

業界の平均値や相場を調べたうえで、自社の強み(独自の技術、既存の取引ネットワーク、差別化された商品など)を明確に説明できなければ、信頼を得ることは困難です。

審査を通過する事業計画書の売上根拠の作り方

それでは、具体的にどのように売上根拠を作成すれば、説得力のある事業計画書になるのでしょうか。ここでは、実務で効果的だった3つのステップをご紹介します。

ステップ①:客観的データに基づく市場分析

まず取り組むべきは、事業を展開する市場の客観的な分析です。総務省や経済産業省の統計データ、業界団体の市場レポート、民間調査会社の公開レポートなどを活用し、ターゲット市場の規模と成長性を数字で示しましょう。

たとえば、「日本の〇〇市場は2025年時点で約△△億円であり、年率〇%で成長している」といった具体的なデータを記載します。さらに、その市場の中で自社がターゲットとするセグメント(顧客層、地域、価格帯など)を明確にし、アクセス可能な市場規模を段階的に示すことで、売上予測の論理的基盤を構築できます。

ステップ②:段階的な売上計画の策定

開業初月から高い売上を見込む計画よりも、段階的に売上が成長していく計画のほうが、はるかに説得力があります。

たとえば、「1〜3か月目は顧客開拓期として月商50万円、4〜6か月目はリピート顧客の増加により月商150万円、7〜12か月目は安定期として月商250万円」のように、成長のフェーズと根拠を明示した計画を作成しましょう。各フェーズにおける具体的なアクション(営業活動、広告出稿、商品ラインナップの拡充など)と、それによる顧客数・客単価の変化を数値で示すことが重要です。

ステップ③:根拠資料の添付と補強

事業計画書の説得力を大幅に高めるのが、根拠資料の添付です。たとえば、すでに取引先との間で交わしている基本合意書や覚書があれば、それは強力な根拠資料になります。

また、仕入先からの見積書、類似事業の売上実績データ、市場調査レポートの該当ページのコピーなども有効です。行政書士の立場からは、「本文に書いた数字の裏づけとなる資料が1つでもあるかどうか」が、判断の分かれ目になることが多いと感じています。根拠資料は多ければ多いほど良いですが、最低でも売上予測の主要な前提条件について、何らかの客観的資料を用意することを強くおすすめします。

行政書士が実務で見てきた「売上根拠」に関するよくある誤解

経営管理ビザの申請では、事業計画書の売上根拠についていくつかの誤解が見られます。ここでは、実務で遭遇する典型的な誤解をご紹介します。

「とりあえず大きい数字を書けばいい」という誤解

「事業規模も考慮されるのだから、売上もそれに見合う大きな数字を書かなければならない」と考える方がいらっしゃいます。しかし、これは大きな誤解です。

審査において重視されるのは数字の大きさではなく、数字の「根拠の確かさ」です。非現実的に大きな数字は、かえって「この申請者は事業の実態を理解していないのではないか」という疑念を招く原因となります。

「控えめな数字なら安全」という誤解

反対に、「控えめな数字を書いておけば、少なくとも嘘にはならないから安全だろう」という考えも危険です。

売上が低すぎる計画は、「事業の継続性・安定性に疑問がある」と判断される可能性があります。特に、経営者としての報酬、従業員の給与、事務所の賃料といった固定費を賄えないレベルの売上計画は、「この事業で本当に事業として成り立っていくのか」という根本的な疑問につながります。重要なのは、大きすぎず小さすぎず、客観的なデータと論理に基づいた「合理的な数字」を示すことです。

まとめ:事業計画書は「説得力のある物語」で審査官を納得させる

今回の不許可事例研究では、事業計画書の売上根拠が曖昧であったために不許可となったケースを分析しました。経営管理ビザの審査において、事業計画書は単なる書類ではなく、「この事業は日本で成立し、継続できる」という説得力のある物語です。

その物語の説得力を支えるのが、客観的なデータに基づく売上根拠にほかなりません。市場調査をしっかりと行い、段階的な成長計画を策定し、根拠資料を添付する。このプロセスを丁寧に行うことが、円滑な手続きへの近道となります。

行政書士事務所シクロでは、経営管理ビザの申請・更新に関するご相談を承っております。事業計画書の作成支援から、必要に応じた専門家確認の手配まで、申請のあらゆる段階でサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。

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