相談者:中国の貿易会社の経営者
私は中国・上海で糸や生地、衣類の貿易会社を10年以上経営しています。これまでの経験を活かして、東京に拠点を作り、自社ブランドの立ち上げや、既存の事業を日本で運営したいと考えています。ただ、日本でどんな形で拠点を作れば良いのかが分からず迷っています。
進め方によって必要なビザの種類も変わると聞いたのですが、どれが自分に合っているのか知りたいです。外国人でも一人で会社を作って活動できるのか?そのために必要な準備や資本金、オフィスなどの条件、何から始めれば良いかも含めて教えていただけると助かります。よろしくお願いいたします。
回答:行政書士
中国・上海で長年にわたり糸や生地、衣類の貿易会社を経営されてきたご経験を活かして、東京にも拠点を構え、自社ブランドの立ち上げや既存事業を日本でも展開していきたいとのお考え。
日本では外国籍の方でもお一人で会社を設立して活動できる仕組みがありますので、これまでの経験をそのまま新しい形で活かしていただけます。その仕組みについて順を追って説明します。
どんな形で日本に拠点を作るか
まず、拠点を作る方法にはいくつか選択肢があります。大きく分けると、駐在員事務所/支店/日本法人(株式会社など) の3つです。
1. 駐在員事務所
こちらは、海外本社の連絡拠点として、市場調査や情報収集などの非営利活動だけを行える形です。既存事業の商品販売や契約を日本で直接行うことはできないので、ブランドを動かしたい、実際に取引をしたいという場合には向いていません。
2. 日本支店
中国本社の一部門として日本に登記する形です。これまでの本社の貿易事業を、日本でも同じ形で進めやすい方法です。本社から社員を派遣する場合は「企業内転勤ビザ」が使えます。資本金を新たに用意する必要はありませんが、税務処理などを本社と合わせて管理する必要があるため、場合によっては少し手間がかかります。
3. 日本法人(株式会社など)
既存の貿易事業を日本で独立させて運営したい、さらに新しく自社ブランドも展開したい場合は、新しい日本法人を設立する方法を選ばれる方が多いです。本社とは別の法人格になるので、既存事業と新しい事業を日本だけで分けて管理できるのがポイントです。この場合、代表として活動するには「経営管理ビザ」が必要です。
日本法人設立のポイント
ここからは、日本法人を作る場合に具体的にどんな準備が必要になるかをお話しします。
✅ 資本金3000万円を準備すること
2025年10月16日に改正がなされ、従来の500万円から大幅な変更がありました。
✅ 常勤の職員を1名以上雇用すること
この常勤職員は日本人でも外国人でも可能ですが、日本に居住しているか居住予定である必要があります。
✅ 申請者または常勤職員が相当程度の日本語能力を有していること
申請者または常勤職員のうち、誰か一人は日本語能力が必要となります。「相当程度の日本語能力」とは,文化庁が公表している「日本語教育の参照枠」にある「B2」レベル以上の日本語能力をさします。
具体的には,以下のA~Eいずれかに該当すれば,「相当程度の日本語能力がある」と判断されます。
A:日本語能力試験(JLPT)で「N2」レベル以上
B:BJTビジネス日本語能力テストで「400点」以上
C:中長期在留者として日本に20年以上在留している
D:日本の大学などを卒業している
E:日本の義務教育を修了して,日本の高校を卒業している
✅ 3年以上の経営経験または修士以上の学歴があること
経営者本人の3年以上の経営経験、または修士(大学院の修士課程(博士前期課程)を修了した者に授与される学位)以上の学歴が必要となります。
✅ 実態のあるオフィスを用意すること
既存事業の商品を扱うにしても、新しいブランドを立ち上げるにしても、支障なく作業や打ち合わせができる場所が必要です。自宅やバーチャルオフィスだけでは原則認められないので注意が必要です。
✅ 具体的な事業計画をまとめておくこと
「どんな商品を、どこから仕入れて、誰に売るのか?」既存事業の実績を踏まえて、どのように日本で販売するのかを数字と一緒に説明できるようにしておきましょう。また、税理士、公認会計士、中小企業診断士の経営に関する専門家の事前確認が義務付けされています。
✅ 信頼できる協力者(代表者)を考えておくこと
海外に住んだままだと日本の法人口座を開くのが難しい場合があります。その場合は、日本に住んでいる信頼できる人に一時的に代表取締役になってもらい、後からビザが取れたタイミングで代表を交代するという流れが一般的です。
協力者がいない場合はどうするか
もし「協力してくれる人が身近にいない」という場合でも、進められる方法があります。それが 「4ヶ月の経営管理ビザ」 を使う方法です。
4ヶ月の経営管理ビザの流れ
通常の経営管理ビザ(1年以上)は、会社を作って、オフィスを整えて、全て準備が終わってからでないと取れません。一方で、4ヶ月のビザは「これから会社を作る準備をする人」が日本に一時的に入国して手続きを進めることができる特例です。
4ヶ月ビザを取るときに必要な準備
「何も準備がない状態」では許可されないので、最低でも次のポイントを用意しておく必要があります。
- 資本金3000万円以上の資金を証明できること
- 既存事業の内容と日本での展開を含めた具体的な事業計画
- オフィスをどこに借りる予定かの資料(見積書など)
- 定款の原案を作成しておくこと
既存事業の実績がしっかりしていると、計画に説得力が増します。
来日後に進めること
4ヶ月はあっという間なので、到着後はスピードが大切です。
- 住民登録をして個人口座を開設する
- 資本金を日本の口座に振り込む
- オフィスを正式に契約する
- 定款認証と登記手続きを進めて法人を作る
- 税務署などへの届出
- 必要な届出が揃ったら、1年の経営管理ビザへ更新する
ポイントまとめ
既存の貿易事業を日本で展開する場合も、新しいブランドを立ち上げる場合も、拠点の形やビザの種類は密接に関係しています。協力者がいる場合は代表をお願いする形で進める方法がありますし、いない場合でも4ヶ月ビザを活用して、ご本人が直接、日本で準備を進めることも可能です。何をどこから準備するかで迷うことも多いと思います。進め方や必要書類など、分からないことがあればいつでも遠慮なくご相談ください。一つずつ、必要な手続きを一緒に整理していき、日本でのビジネスをスタートさせましょう。



